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午後の眠気

午後半ばの覚醒の落ち込みは体内時計の予定表にあるもので、意志の問題でも、たいていは昼食の問題でもありません。どこから来るのか、自分の谷が何時に来るのか、そこに何を入れるか。

ウェルビーイングの科学

午後一時から四時のどこかで、たいていの人はまともに考えられなくなります。書類が進まない。同じ段落を三回読む。単に覚醒が下がるだけではなく、持続して力のいる注意という特定の能力が、抜けます。

ほとんどの人がこれを昼食で説明し、ほとんどの人が外しています。この谷は、食べなかった人にも来ます。 別の時刻に食べた人にも来ます。何日も起こしたまま、食事も時計も与えない実験手続きの中でも来て、しかも体内時計の上の同じ位置に、食事とは無関係に現れます。

このページの立場。午後の眠気は予定された生理的な出来事であって、あなたの午前中に対する判定ではありません。 人間の一日が持つ二つの低点のうちの一つで、もう一つのほうは眠っているあいだに通過しています。個人の失敗として扱うことが、一日でいちばん予測のつく九十分を、計画ではなく抵抗に使うやり方です。

二つの過程、一つの谷

アレクサンダー・ボルベイが1982年に出し、いまも睡眠科学の背骨である二過程モデルが、一日の形を二つの独立した力で説明します。

過程Sは睡眠圧です。 目覚めた瞬間から、起きている時間に比例して積み上がり、眠っているあいだに放出されます。午後半ばには、十分に積み上がるだけ起きています。

過程Cは概日リズムです。 体内時計が決める波で、何をしていてもおよそ二十四時間で回り、一日中起きていたのに夜になっても覚醒していられるのはこれの働きです。仕事は、上がってくる睡眠圧を打ち消すこと。 一日を通して上昇する信号でそれをやるのですが、なめらかな上昇ではありません。

午後の谷は、二つが一瞬だけ互いを覆いきれなくなる場所です。睡眠圧はかなり積み上がっていて、概日の覚醒信号はまだ夕方の頂点まで上がっていない。ボルベイが2016年にダーン、ヴィルツ-ユスティス、デブーアと出した再検討が、この構造が四十年でどれだけ持ちこたえたかを整理しています。

同じことを反対側から言う観察が二つあります。ペレツ・ラヴィの超短時間の睡眠覚醒スケジュールの研究は、午後の早い時間に、異常に寝つきやすい「睡眠の門」があり、夕方の早い時間に、どれだけ疲れていても眠れない「禁止帯」があることを見つけました。どちらも概日の位置に固定されています。ロジャー・ブロートンは、午後のこの帯を欠陥ではなく人間の睡眠の組み立てに本来ある特徴だと論じました。多くの文化が独立にそこへ休みを置いたことと、辻褄が合います。

そしてティモシー・モンクの総説が、昼食問題についての正直な会計です。大きな食事、とりわけ重い食事や炭水化物の多い食事は、谷をいくらか深くします。谷を作ってはいません。 昼食を抜いても谷は消えず、午後の残りはむしろ悪くなります。

日本語圏では、この眠気にすでに別の名前がついている

英語版のこのページが戦っている俗説は、漠然とした「昼食のせい」です。日本語圏の俗説は、二〇一〇年代の後半にほぼ一語に固まりました。「血糖値スパイク」です。

2016年10月のNHKスペシャル以降に広まった語で、指している現象そのものは実在します。食後高血糖 —— 空腹時の血糖値が正常でも食後に大きく上がる人がいて、その振れ幅が心血管系や認知機能のリスクと結びつく、という話。医学的に議論されている、まっとうな対象です。

問題は、その語が別の現象の説明の位置に座ったことです。日本語で「午後の眠気」を検索すると、かなり早い段階で「血糖値スパイクが原因です」という説明に当たります。そして丼もの、ラーメン、白米中心の定食という、日本の昼食の典型が並べて挙げられる。

ここは正確に書く価値があります。 一つずつ分けると、こうなります。

谷そのものは、血糖とは独立に来ます。 実験室で食事を与えず時計も見せない条件で現れる以上、食事が原因である可能性は、設計の段階で除外されています。 血糖の変動が眠気を作るのではなく、血糖の変動が来る時刻と、谷が来る時刻が重なっています。

食事は谷を深くします。 ここはモンクの総説どおりで、日本語圏の俗説が完全な間違いではない理由でもあります。重い昼食を軽くすると、午後がいくらか楽になる。これは本当です。 ただしいくらかであって、谷が消えるわけではない。

実在する現象の名前が説明の位置に座ると、迷信より崩しにくくなります。 「血糖値スパイクは嘘だ」と言うのは間違いですし、そう言えば読者は正しく反発します。正しい言い方は、血糖値スパイクは実在するが、午後の眠気の原因ではなく、深さに寄与する一要因である、です。この区別が保てないと、読者は炭水化物の量を調整し続けて、時計のほうに一度も触らないまま終わります。

そしてもう一つ、時間割の側。 日本語圏の職場と学校では、昼休みがおおむね十二時台に制度として固定されていて、午後の会議や授業が十三時台から始まります。つまり谷と、その日いちばん人がいる時間帯が、ほぼ必ず重なります。

英語版のこのページは「自分の谷に何を入れるか」を個人の裁量の話として書けます。日本語圏の読者の多くは、その裁量の外にいます。 会議の時刻は自分では決まらない。午後一番の打ち合わせが慣習になっている職場で、そこを動かそうという提案は、たいてい本題より先に疲れます。

だから、実務として残る手は限られます。谷そのものは動かせないが、谷の中で何を担当するかは動かせることがある。 午後一番の会議で自分が資料を作る側か、聞いて判断する側かは、事前に決められる余地があります。深い判断を求められる議題を、朝の枠に一つだけ移せないかを交渉するのが、現実的にいちばん割の合う一手です。全部は動かせません。一つは動くことがあります。

そして、この時間帯の会話について一つ。午後の谷では、言い方が雑になります。 抑制に使う資源が落ちているので、同じ内容がきつく出る。午後一番の打ち合わせで人間関係が傷むのは、その人の性格というより、時刻の側の理由であることがかなりあります。 自分の出方の癖については対人コミュニケーションのスタイルのほうに書きましたが、癖が最も出るのがどの時間帯かは、こちらの話です。

昼寝を制度として置く試みが日本にはいくつもあります —— 学校の午睡、企業の仮眠室。それはこのページではなく昼寝のほうにまとめました。適量と、失敗の形を含めて。

あなたの谷は三時ではない

谷は、壁の時計ではなく自分の体内時計から一定の距離にあります。つまり朝型・夜型と一緒に動きます。

自然に五時半に目が覚める朝型なら、正午を少し過ぎたあたりで当たるでしょう。放っておけば十時まで寝ている夜型なら、午後四時か五時まで来ないかもしれません。夜型の人の最良の作業時間が、他の全員の勤務時間が終わったあたりから始まるのも、同じ理由です。 特性そのものは朝型・夜型に、自分の位置はクロノタイプ診断にあります。

谷を深くするものが二つあり、どちらもありふれています。

  • 短い夜。 睡眠圧の蓄積が多いぶん谷が深くなるので、午後の眠気は睡眠負債の感度の高い指標の一つです。
  • 社会的時差ぼけ。 体が「二時間遅く起きた」と思っているなら、谷も二時間遅く落ちます。日本の一般的な九時始業と夜型の体の組み合わせでは、谷が午後の会議の真ん中に着地します。 そのずれが何を請求しているかは夜型が朝型の時間割の中で払っているもののほうに書きました。

そして、予定を組み替えるのではなく受診すべき版があります。 午後の落ち込みが「起きていられない」水準 —— 会話の途中で、食事の途中で、運転中に眠ってしまう —— なら、それは普通の谷ではありません。その型の日中の過剰な眠気は医療の領分です。 治療されていない睡眠時無呼吸もナルコレプシーも、まさにそういう見え方をして、どちらも予定の組み替えでは治りません。 日本では睡眠外来、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、精神科・心療内科が入口になります。

そこに何を入れるか

原則は単純です。持続して新しいことを考える必要のある作業には向かない枠で、それ以外のかなりの範囲には十分に使える枠です。

人ではなく、仕事を動かす。 事務処理、定型作業、片づけ、整理、返しそびれていた連絡 —— どれも抜けている能力を必要としません。冷静で丁寧な頭が要るものは午前へ、夜型なら谷のあとへ。自分の最良の二時間を守る費用は、たいてい誰かが別の枠で会議に出るというだけです。

ここではカフェインより、会議と運動のほうが効きます。 人と話すことと体を動かすことは、夜から借りずに覚醒を上げます。外を十分歩くのが、費用対効果で最も安定した一手で、日光が体内時計を固定する仕事も同時にやってくれます。

昼寝ができるなら、この時刻です。 谷はラヴィの言う睡眠の門と重なっていて、だから午後の昼寝は落ちやすく夕方の昼寝は落ちにくい。長さが思われている以上に効くので、起きたときに悪化しない量昼寝のほうにあります。

コーヒーには気をつける。 午後三時の一杯は、その夜に測定できる影響が出る窓の中にあり、明日の谷を深くして輪を回し始めます。 算数はカフェインと不安のほうに。使うなら、早く、少なく。

そして、これを人物評として読むのをやめる。 意欲について、怠けについて、職業選択が間違っていたのではないかについて —— かなりの量の自己批判が、概日の覚醒信号がその日の最低値にあるというだけの時間帯で生産されています。この谷の中で辿り着いた結論は、九十分待ってから信じてください。 意志の消耗のせいにされているものの相当部分が、実はこれが予定どおり来ているだけだ、という関連した指摘は決断疲れのほうにあります。

出典

  • · Borbély, A. A. (1982). A two process model of sleep regulation. Human Neurobiology.
  • · Borbély, A. A., Daan, S., Wirz-Justice, A., Deboer, T. (2016). The two-process model of sleep regulation: a reappraisal. Journal of Sleep Research.
  • · Monk, T. H. (2005). The post-lunch dip in performance. Clinics in Sports Medicine.
  • · Lavie, P. (1986). Ultrashort sleep-waking schedule III: 'gates' and 'forbidden zones' for sleep. Electroencephalography and Clinical Neurophysiology.
  • · Broughton, R. J. (1998). SCN controlled circadian arousal and the afternoon 'nap zone'. Sleep Research Online.

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