朝型と夜型。日本語にはこの言葉が最初から揃っています。測る道具も古くからあって、石原金由らが日本語版の朝型夜型質問紙を心理学研究に発表したのは1986年です。輸入してくるところから始める必要がない、めずらしい話題です。
揃っていないのは時間割のほうです。四十年ぶんの研究が、この性質は生まれつきの部分が大きく、年齢とともに決まった曲線を描くと言い続けているあいだ、始業時刻はほとんど動きませんでした。
8.1%
日本の日勤労働者1,404人のうち、社会的時差ぼけが2時間以上あった割合
2.14倍
その人たちに抑うつ症状が見られたオッズ比
7.2%
フレックスタイム制がある企業の割合
43.6%
睡眠が6時間未満の成人女性の割合。男性は38.5%
好みではなく形質である、とはどういうことか
クロノタイプとは、何にも強制されていないときに体が眠りたがる時刻のことです。ミュンヘンのティル・レネベルクらが広めた測り方は、平日を完全に無視して、休日の睡眠の中央時刻を取るというものです。土曜に零時から八時まで眠る人は中央時刻が四時、二時から十時まで眠る人は六時で、こちらが夜型です。
分布は釣鐘型で、夜のほうへ長い裾を引いています。そして双子を使った研究では、この性質のおよそ半分が遺伝で説明されました。フィンランドの8,753組を対象にした調査です。日本人を対象に同じ推定が出ているわけではありませんが、行動遺伝の推定値がこの規模でひっくり返ることは多くありません。
夜型を怠惰の言い換えとして扱う語り方は、この四十年のあいだずっと、測定のほうに否定され続けてきました。
十九歳で最も遅くなり、そこから一生かけて早くなる
この分野でいちばん使える事実は、夜型のピークが十九歳前後にあって、その後は生涯にわたって早くなり続けるということです。米国の生活時間調査53,689件の睡眠日誌が、それをそのまま描き出しています。
- 15歳: 4.1時
- 18歳: 4.58時
- 19歳: 4.78時
- 20歳: 4.87時
- 25歳: 3.97時
- 40歳: 3.32時
- 70歳: 2.92時
二十歳の体は、朝の五時近くを睡眠の真ん中にしたがっています。七十歳の体は三時前です。一生のあいだに二時間動いて、その半分以上が十五歳から二十五歳のあいだに起きます。起きられない高校生は反抗しているのではないし、五時に目が覚める高齢者は勤勉なのでもありません。曲線がそこに置いているだけです。
時間割を曲線のほうへ曲げたらどうなるかは、一度試されています。2017年にシアトルの学区が高校の始業時刻を7時50分から8時45分に動かし、ギデオン・ダンスターらが手首の装置で生徒を前後で測りました。睡眠は中央値で34分増え、成績は4.5%上がり、二校のうち条件の厳しいほうでは出席率と遅刻も改善しました。生徒は変わっていません。壁の時計が変わりました。
社会的時差ぼけ、日本で測られた数字
レネベルクとマーク・ウィットマンが2006年に名前をつけたのが、体が求める睡眠と週が許す睡眠のずれです。ソーシャル・ジェットラグ、日本語では社会的時差ぼけ。測り方は単純で、休日の睡眠中央時刻から平日の睡眠中央時刻を引きます。軽い夜型が早い時間割で働けば一時間、きつい夜型なら二時間から三時間が、毎週、職業人生のあいだずっと続きます。
日本の数字があります。イスラムらは、交代勤務ではない日勤の従業員1,404人を対象に、社会的時差ぼけを測りました。日本の職域コホートから出た調査です。
- 1時間未満: 63.5%
- 1時間以上2時間未満: 28.4%
- 2時間以上: 8.1%
そして2時間以上の群では、抑うつ症状を持つオッズが1時間未満の群の2.14倍でした。1時間から2時間の群は1.30倍で、統計的にはっきりしない範囲に入っています。量が増えるほど関連が強くなる形です。
この研究は一時点の測定なので、どちらが先かは言えません。眠りにくい人が夜型に見えているだけ、という順番も残っています。それでも、ずれの大きい人ほど状態が悪いという並びは、欧州の大規模研究が体重について報告してきたものと同じ向きです。
背景の数字も置いておきます。令和5年の国民健康・栄養調査では、一日の平均睡眠時間が6時間未満の成人は男性で38.5%、女性で43.6%でした。厚生労働省の睡眠ガイド2023が成人に求めているのは6時間以上です。四割前後がその線の下にいる国で、夜型は量の不足と時刻のずれを同時に抱えます。
交渉できる時間割が、そもそも存在しない場合
英語で書かれた助言はこの先で、始業を一時間遅くしてもらう交渉を勧めます。そして日本語でそれを読むと、前提のところでつまずきます。
令和6年の就労条件総合調査によると、フレックスタイム制がある企業は7.2%です。企業規模で割ると、1,000人以上で34.9%、300人から999人で19.6%、100人から299人で9.2%、30人から99人では4.4%。多くの人にとって、交渉の相手は制度ではなく上司個人になります。
これは記事にとって不都合な事実なので、先に書いておきます。ここまでの研究は、時間割が動かせる場所でいちばんよく効きます。 動かせない場所で残るのは、もっと小さいものです。
動かせるものを順に見ると、まず起床時刻の固定があります。これは会社の許可が要りません。次に朝の光で、通勤が屋外を含むならそれが一番安い装置になります。それから夜の側を暗くすること。この三つで数十分、軽い夜型なら差の全部、きつい夜型なら三時間のずれが二時間になります。小さく聞こえますが、毎週のことなので合計では小さくありません。
そして、動かせない部分を自分の欠陥として処理しないこと。ここがいちばん効きます。夜型でいることの代償の大半は疲労ではなく、疲労を人格の問題として説明し続ける作業のほうから来ています。体が回復しない理由については疲れているのに眠れないのほうに書きました。
一つの家に、時計が二つ
衝突が個人的になるのは寝室です。カップルの多くはクロノタイプが揃っておらず、そしてそのずれは、別のものの顔をして現れます。
| 朝型 | 中間 | 夜型 | |
|---|---|---|---|
| 休日の睡眠中央時刻 | 2時30分より前 | 2時30分から4時15分 | 4時15分より後 |
| 頭が冴える時間 | 朝7時から11時 | 昼前から午後 | 夕方から深夜 |
| 最悪の時間 | 夜10時 | どちらの端でもない | 朝7時 |
| 相手の時計から見えるもの | やっと静かになった時間に寝ている | まともで、少し得をしている | 朝食にいない、深夜に起きている |
| 生まれる言い合い | どうして話したがらないのか | なぜみんなそこにこだわるのか | 帰ってきた途端に寝るのはなぜか |
2018年にヨッチ、ストラルスキ、ヤンコフスキが91組を調べ、クロノタイプのずれが女性側の関係満足度の低さを予測したこと、そして親密な時間の好みのずれが双方の性的満足度の低さを予測したことを報告しました。2022年に Chronobiology International に出た、より大きなペア単位の研究でも、揃っているカップルのほうが睡眠と性的満足度の報告がよいという結果が出ています。効果量は中程度で、標本も巨大ではありません。それでも記述としては、経験した人には見覚えがあるはずです。夜型が人間らしくいられる時間帯は、朝型がすでに意識を失っている時間帯です。
ずれたカップルの失敗は時計そのものではありません。時計を判決として読むことです。朝型は夜十時に拒絶を聞き、夜型は朝七時に無関心を聞きます。どちらも起きていません。時間割の問題が関係の問題として処理されていて、そういうとき片方がそれを言わずに迂回していることが多く、対立スタイル診断はその迂回のほうを拾います。夜のあいだ同じ場面が頭で回り続けるなら、反芻の側の話も重なってきます。
時計と戦うか、時間割を交渉するか
戦略は二つあります。長く保つのは片方だけです。
時計を実際に動かすてこは光です。起きて数分以内の強い光は時計を前へ引き、暗い夜はそれ以上遅れるのを止めます。動く幅は数十分、うまくいって一時間。意志の力では動きません。動かそうとした人たちの研究は、ほとんどが再発の記録です。
効き始めた最初の合図は、朝型になることではありません。平日の朝が、不可能ではなく単に不愉快な程度に収まることと、日曜の夜に恐れが来なくなることです。
Sources
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- 石原金由, 宮下彰夫, 犬上牧, 福田一彦, 山崎勝男, 宮田洋 (1986). 日本語版朝型-夜型 (Morningness-Eveningness) 質問紙による調査結果. 心理学研究, 57(2), 87-91.
- Fischer, D., Lombardi, D. A., Marucci-Wellman, H., Roenneberg, T. (2017). Chronotypes in the US: influence of age and sex. PLOS ONE, 12(6).
- Roenneberg, T., Allebrandt, K. V., Merrow, M., Vetter, C. (2012). Social jetlag and obesity. Current Biology, 22(10).
- Wittmann, M., Dinich, J., Merrow, M., Roenneberg, T. (2006). Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiology International, 23(1-2).
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- Wieth, M. B., Zacks, R. T. (2011). Time of day effects on problem solving: when the non-optimal is optimal. Thinking & Reasoning, 17(4).
- 厚生労働省 (2024). 令和5年国民健康・栄養調査報告.
- 厚生労働省 (2024). 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
- 厚生労働省 (2024). 令和6年就労条件総合調査 結果の概況.