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考えすぎ(反芻思考)

同じ会話を二十回再生してしまうのはなぜか。反省との境目、気分と眠りに起きること、ループの相手がたいてい人である理由。

ウェルビーイングの科学

反芻思考(はんすうしこう)とは、つらい出来事について同じことを繰り返し考え続け、考えが決定にも行動にも変わらないまま回り続ける状態のことです。日常語では「考えすぎ」「ぐるぐる思考」。語はウシが飲み込んだものを口に戻して噛み直す動作から来ています。

1990年代初め、スーザン・ノーレン-ホークセマが「同じ出来事のあとで落ち込みが長引く人と、数日で戻る人の違い」を調べました。違いは出来事の重さではなく、そのあと頭の中で何をしたかでした。

心配とは向きが違います。心配は未来を向いてこれから起きうることを並べ、反芻は過去を向いて回ります。同じ場面、同じ三行、新しい情報のない同じ問いを、夜十一時にもう一度、二時にもう一度。

「反省」と反芻はどこで分かれるのか

日本語でいちばん混線するのがここです。反省はこの国では制度化された美徳です。 反省文も反省会も学校と職場の標準手続きです。だから同じ場面を何時間も思い返している人が、自分は真面目にやっていると感じられてしまう。

分かれ目は時間の長さでも真剣さでもなく、出口があるかどうかだけです。 反省は「次はこうする」で終わり、そのあとは同じ場面に戻る理由がなくなります。反芻は終わらず、結論が出ても五分後に同じところから始まり、結論のほうが少しずつ変わっていきます。

ワトキンズは反復思考を建設的なものと非建設的なものに分けました。分けるのは内容ではなく問いの形です。「なぜ自分はこうなのか」は答えが無限にあるので回り続け、「あのときどう言えばよかったか」は答えが一つ出ると止まります。

「考えすぎだよ」は性格評価で、説明ではない

この状態に最初につく言葉は、たいてい他人からの一言です。「考えすぎだよ」「気にしすぎ」「真面目すぎる」。どれも善意で言われていて、どれも人物の評価です。評価として渡されると、何が起きているかを言う言葉が手元に残りません。

ここ数年はもう一つ、HSP・繊細さんという説明が広く行き渡りました。当てはまる人はいますが、生まれつきの気質として説明を終えてしまうと、反芻は記述の対象から外れます。 気質の話と過程の話は別のもので、過程には手順と時刻ときっかけがあります。

過程として見ると、かなり具体的です。反芻は日中は静かで、大きくなるのは隙間のほう。通勤、風呂、そして何も考えることのない枕の上。送らなかったメッセージを書いて直し、そこにいない相手に説明する。次に会ったとき、相手はその会話を覚えていません。

研究でわかっていること

反芻は落ち込みを短くしません。長くします。 2008年のレビューが二十年分の追試をまとめた結論で、悪い一日を振り返って処理しようとした人は、関係のない何かをした人より長く落ち込み、あとでまた落ち込みやすい。

  • 問題解決はむしろ悪くなります。 反芻している当の問題について、出てくる案の数も質も下がる。取り組んでいる感じは、取り組んでいることと同じではありません。
  • 知能とは関係がありません。 反芻は苦痛の量と相関し、IQとは相関しない。「頭のいい人の宿命」という説明は、慰めとしては悪くありませんがデータの支持はありません。
  • 抑うつと不安の両方に共通して出てきます。 だから臨床では診断の枠をまたぐ過程として扱われます。ただし反芻があることは診断がつくことを意味しません。 ありふれた過程で、大半の人のそれは病気ではありません。
  • 眠りとほぼ必ず同時に来ます。 ハーヴェイの不眠の認知モデルは、就寝前の心配と「眠れているかの監視」を中心に置きました。二時の頭は夕方やっていたことを大きい音でやり直し、さらに眠れたかどうかを確かめ始めます。

ノーレン-ホークセマらは女性のほうが反芻しやすいと繰り返し報告し、説明として挙げたのは気質ではなく社会化でした。ただし標本はアメリカの一般人口です。 説明が社会化であるなら結論は社会ごとに変わるはずで、日本の男女差にそのまま外挿する根拠はありません。

ループの相手は、たいてい人です

反芻の対象を聞くと、答えはほとんどの場合、人です。誰が何を言い、どういう意味だったのか、離れていくのか。ループは監視装置で、対象は関係です。

愛着不安は、つきつめれば絆を監視する傾向です。沈黙をデータとして扱い、距離を終わりの下書きとして読む。その傾向に静かな夜を一つ渡すと反芻が出てきます。出どころはアタッチメント理論にあります。アタッチメント・スタイル診断が測るのは注意のうちどれだけが絆に向いているか、考えすぎ傾向テストが測るのはループの音量です。二つ並べると、片方では出てこない形が出ます。

内容は地図として読めます。止められないのは、知らないままにしておけないことです。多くの人にとってそれは「鍵を閉めたか」ではなく「私たちは大丈夫か」です。気持ちのいい話ではありませんが、ループの燃料になっている問いは、たいてい一度も本人に聞いていません。 夜通し回していたことが誠実さのように感じられることもありますが、相手の側では何も起きていません。喧嘩のあとのそれは対立と修復の領域で、回した量は修復の量には入りません。

どこから専門家の領域になるか

このページは読み物で、判定ではありません。止め方を四つ並べることもしません。反芻に効く手順は臨床の領域にあり、一行で渡せるものではないからです。

そのかわり、一人で整理する段階を超えている目印を書きます。

  • ほぼ毎日、二週間以上続いている
  • 眠れない夜が、普通の一週間の半分を超えている
  • 仕事や家事が実際に止まる。読んでいるのに内容が入らない
  • 食欲や体重が変わった
  • 以前は楽しかったことから色が抜けた

重症度の採点ではなく、自分で整理する以外の手が要る段階かどうかの目印です。

入口は三つあります。かかりつけ医でかまいません。心療内科と精神科はどちらもこの相談を扱うので、敷居の感じで選んで間違いにはなりません。各都道府県と政令市の精神保健福祉センターは無料で相談を受け、必要なら医療機関につなぎます。何を相談していいかまだ決まっていない段階なら、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)は、それが決まっていない人の電話を受けるための線です。

死にたい気持ちがあるときは先にこちらです。いのちの電話 0570-783-556、#いのちSOS 0120-061-338。そこまで深刻だと自分で判断してからかける必要はありません。いますぐ危ないときは 110 か 119 です。

反芻があることは、あなたに病名がつくことを意味しません。 ここで渡せるのは、ループが何時に大きくなり、誰について回り、どの問いを燃料にしているかという記述です。名前がついても止まりはしませんが、性格評価のまま置いておくよりは扱える形になります。

出典

  • · Nolen-Hoeksema, S. (1991). Responses to depression and their effects on the duration of depressive episodes. Journal of Abnormal Psychology.
  • · Nolen-Hoeksema, S., Wisco, B. E., Lyubomirsky, S. (2008). Rethinking rumination. Perspectives on Psychological Science.
  • · Watkins, E. R. (2008). Constructive and unconstructive repetitive thought. Psychological Bulletin.
  • · Harvey, A. G. (2002). A cognitive model of insomnia. Behaviour Research and Therapy.

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