パニック発作
数分で頂点に達し、そこから自分で下がっていく恐怖の急な高まり。13の症状、過換気がそのうち何を作っているのか、発作が自分の頂点を保てない理由、そして一回の発作と「パニック症」のあいだにある距離。
ウェルビーイングの科学
パニック発作とは、強い恐怖または不快感が急に高まり、数分のうちに頂点に達して、そこから引いていくものです。悪い気分がすばやく来ること、ではありません。形があります。急な上り、最初の10分以内のどこかにある短い頂点、そして何もしなくても起きる下り。
体の側で起きているのは、完全な緊急反応です。本来は捕食者のために用意されている一揃いが、目の前に緊急事態のない体の中で、全部放出されている。症状のどれもが、その反応の正しい部品です。パニック発作の唯一の間違いは、起きたタイミングです。
初めての発作、そして胸痛を伴う発作は、この頁より先に医師のところにあります。 これは「たいしたことはない」と言うための文ではありません。順番の話です。 ここを飛ばすことが、甲状腺の問題や不整脈が二年間「不安」と呼ばれ続ける経路になります。
13の症状と、そのうち二つが恐ろしい理由
診断上の症状リストは13あって、その急な高まりの中に4つ以上が同時に来ることが、ただの強い不安ではなくパニック発作である条件になります。厚生労働省の一般向け解説も同じ枠組みで、「10分以内に頂点に達する」という時間の目安を書いています。4つに届かないものも認められていて、限定症状発作と呼ばれます。
- 動悸、心拍数の増加
- 発汗
- 身震い、震え
- 息切れ、息がつまる感じ
- 窒息感
- 胸の痛みまたは不快感
- 吐き気、腹部の不快感
- めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
- 寒気または熱感
- 感覚の麻痺、またはしびれ
- 自分が自分でない感じ、または現実感がなくなる感じ
- 抑制を失う、またはどうかなってしまうことへの恐怖
- 死ぬことへの恐怖
最後の二つを見てください。リストに載っています。 発作の最中の「死ぬ」という確信は、状況を判断して間違えたものではありません。発汗と同じ意味で症状です。 最大限に警報を鳴らしている体が報告する内容のひとつ。発作を経験した人のほとんどがこの考えを通りますし、そのほとんどが、起きている間はそれが症状だとは信じられません。
11番目も同じです。自分が自分でない感じ、少し外から自分を見ている感じには臨床の名前があって(離人感・現実感喪失)、極度の覚醒に想定されている特徴です。何かが壊れていく兆候ではありません。感覚は派手で、内容は証拠ではない。
いま起きたことが身体の病気ではないのかを突き合わせる作業そのものは、あれはパニック発作だったのかのほうにあります。この頁が扱っているのは、なぜその感覚が出るのかです。
なぜ頂点に達し、なぜ自分で下がるのか
この曲線がいちばん役に立つ知識で、しかも慰めではなく機構です。この区別は実用的で、慰めは明け方の4時に効かなくなり、機構は効かなくならない。
発作が走っているのは交感神経の放出です。アドレナリンとノルアドレナリンが量をもって出て、心拍と呼吸が押し上げられ、血液が大きい筋肉のほうへ回る。これらは速く代謝されて消えていき、消えるものを燃料にした反応は、自分の頂点を保てません。 発作が短いのはそのためです。うまく対処できたからではなく、危険が去ったからでもない。燃料が分単位で片づくからで、それと一緒に上がったものは、それと一緒に下がります。
ここから三つ出てきます。
約束している内容は実行されません。 速く打っている心臓は、止まりかけている心臓ではなく、それを駆動している放出は数分で片づきます。過換気は二酸化炭素を下げるので、酸素が減って窒息に近づくという経路ではありません。そして警報状態は精神病ではなく、精神病はこれとまったく似ていないし、10分の塊で来て去ることもありません。
あとに残る時間のほうが発作より長く、それは二回目の発作ではありません。 震え、疲れきった感じ、頭痛、噛みしめていた顎の痛み、数時間の削られた感じ。使い切った警報反応の感触がそれで、何もしなくても収まります。
「何の前触れもなく」は正確ではなく、その訂正は役に立ちます。 モイレットらはパニック症の人を連続的に記録し、本人が突然だと感じた発作の最長47分前から、自律神経と呼吸の指標に有意な不安定さがあったことを報告しました。発作の始まりそのものは、心拍の上昇、一回の呼吸量の増加、二酸化炭素の低下として現れていた。発作は自然発生ではありませんでした。見えなかったのであって、それは別の主張です。そして呼吸は、本人が何かに気づく前からすでに関与していました。
過換気が症状を作っている、という部分
リストの中でいちばん奇妙に見える項目はここで説明がつきますし、世界でもっとも流通している助言が逆である理由も、ここです。
速い呼吸は二酸化炭素を吐き出します。二酸化炭素が下がると脳に血を送る動脈が細くなり、血液の化学的な状態が、末梢の神経が勝手に発火する方向に動きます。めまい、現実感のなさ、手と口のまわりのしびれは、恐怖から直接ではなく、恐怖のあいだの呼吸のしかたから出ています。 つまり恐怖への体の応答が、その恐怖を作った感覚をさらに生産している。ここで輪が閉じます。
だから「深呼吸して」は向きが逆です。深い呼吸は空気を多く動かし、空気が増えれば二酸化炭素はさらに下がる。生理に合う指示はほとんど反対で、回数を減らし、深くではなく小さく、吸うより吐くを長く。 空気は多くではなく、少なく。
そしてここは日本語で読む人にとって、英語版より実利のある一段です。紙袋を口に当てて再呼吸させるのは危険で、やってはいけません。 救急医学からは1989年に外れています。カラハムが、低酸素状態だった患者と心筋虚血だった患者に紙袋を使って三例の死亡を報告したためです。紙袋は吸う空気の酸素濃度を下げる。速い呼吸が心理的なものなら生き延びますが、身体的なものなら生き延びません。そして身体的なほうの人は、その場では誰にも見分けられない人です。
日本語では「過呼吸には紙袋」が、学校や部活や職場の手当ての知識としていまも残っています。二酸化炭素に効くという理屈は合っているので、もっともらしく聞こえる。合っていることが、使ってよい理由にはなりません。
なお、その感覚がなぜそれほど大きく読まれるのかは別の機構で、内受容感覚に書いてあります。警報下の体は、音の大きい計器で、同時に目盛りの狂った計器です。
「パニック」という語が日本語で薄まっていること
ここが英語版にない節で、しかも先に片づけないと、この頁の残りが過小に読まれます。
日本語では「パニック」が日常語として完全に馴染んでいます。「パニクる」という動詞まである。会議で言葉が出なかった、締切が重なって頭が真っ白になった、そういう場面に使われます。それは症状ではありません。 そして臨床語の「パニック発作」は、この一般語と同じ綴りを共有しているせいで、輪郭を失っています。
実際に起きることは二方向です。
当人が過小に見積もる。 「パニックになっちゃって」と言うと、自分でも三割くらい軽くなる。10分で頂点に達する完全な緊急反応を通過したことと、焦ったことが、同じ語になる。だから記録に残らず、受診が遅れます。
周囲も軽く扱う。 「落ち着けばいい」「気の持ちよう」という応答が自然に出てくるのは、相手が聞いた語がその程度の意味だったからです。悪意ではなく語彙の問題で、だからこそ説明では解けません。
もう一つ、名前の話。日本語ではこの病名が二つ流通しています。「パニック障害」と「パニック症」。DSM-5の日本語訳(日本精神神経学会, 2014)で、disorder の訳語を原則「症」にそろえる方針が採られたので、新しい資料ほど「パニック症」になります。同じものです。 古い資料が出てきても古いだけで、違う病気を読んでいるわけではありません。
そして、もっと実務的に効くほうの名前の問題。「過呼吸」が、発作全体の俗称として使われています。 「過呼吸になった」で説明が終わる会話が普通にある。過換気は確かに起きていて、前の節のとおり症状のいくつかを作っています。でも過換気は13症状のうち数個を説明する部分の名前で、発作の説明ではありません。 名前がそこで止まると、残りの症状と、本体のほう —— 次の発作への恐れ —— が名前を持たないまま残ります。名前のないものには、やることが決まりません。
どの科にかかるのか、救急外来のあとに何が起きるのかはあれはパニック発作だったのかに書いてあります。この頁の仕事は、部分の名前で止まっていると、本体が見えないままになると言うところまでです。
一回の発作と、パニック症
これは世界についての二つのかなり違う事実で、混ぜることが、前者が後者になる主要な経路です。
米国の全国併存疾患調査(NCS-R)では、成人の22.7%が生涯に少なくとも一回のパニック発作を経験していました。パニック症はその一部で、広場恐怖症を伴わないものが3.7%、伴うものが1.1%。世界精神保健調査の25か国では、パニック症の生涯有病率は1.7%でした。一回のパニック発作はありふれた人間の出来事で、障害はずっと稀なパターンです。 役に立つ情報の大半は、この二つの数字の差のところにあります。
同じ国際調査がもっと細かく線を引いています。反復するパニック発作は、その後に精神疾患が発症することをオッズ比約2.0で予測しました。一回だけの発作は予測しませんでした。 信号は反復のほうで、一回は悪い午後です。
違いを作るのは発作ではなく、発作のまわりに組み上がるものです。そしてそれは発作の最中ではなく、あとの数週間に組み上がります。一日に何度か手首に手が行く。階段で何でもない心拍が「警告」として読めるようになる。鞄に水のペットボトルが入って、入ったまま残る。それから地図が動きはじめます。一つの移動が省かれ、安堵が即座に、本物として来る。即座の安堵は、存在するもっとも効果的な教師です。 その過程の行き先には名前と頁があります —— 広場恐怖症。「広場が怖い」という意味ではありません。
ここに置くべき注が二つ。パニック症の特徴は何の手がかりもない発作で、睡眠から人を起こすものも含まれます。夜間のパニックはよく記録されていて、珍しいものではありません。そして、人前では必ず来るのに一人のときには来ないという形は、多くの場合社交不安の身体側で、助けが違うので区別する価値があります。
同じ高まりを作る別のもの
身体の原因との重なりはわずかではありません。だから臨床では、礼儀としてではなく最初にそちらを片づけます。もっとも見落とされる項目は、心臓の話ではありません。
カフェイン。しかも日本では入口が複数あります。 クレベブラントとフリックのメタ分析では、約480ミリグラム(コーヒー約5杯)で、パニック症の人の51.1%にパニック発作が生じ、健康な対照では1.7%でした。小さい効果ではありません。そしてコーヒー何杯という換算だけでは日本の摂取量に届きません。眠気防止薬、総合感冒薬や鎮痛薬に配合された無水カフェイン、エナジードリンク、濃いめの玉露や抹茶。 自分では「コーヒーは一日一杯」のつもりで、合計が倍になっていることがよくあります。内側からこの覚醒を不安と区別するのがほぼ不可能である理由はカフェインと不安に書いてあります。
アルコールの離脱。 もっと遅い時計で動きます。深く飲んだ翌朝、あるいはやめて数日後に、震え・発汗・動悸・理由のない恐怖が、ちょうどこの形で出ます。
一部の薬。 吸入薬や鼻の充血をとる薬、各種の刺激薬を含みます。医師が最初に「ここ数週間に飲んでいるもの」を聞くのはこのためです。
甲状腺機能の亢進。 動悸、手の震え、息切れ、不眠が、不安にそのまま読める組み合わせで出ます。最初に見えるものが精神科的に見えることもあります。
どれも「気のせい」の言い換えではありません。別の説明で、いくつかはパニックより単純な答えを持っています。 だから除外が先に来ます。「一度みてもらって」は、病気である確率の話ではなく、順番の話です。 質問票が何のためにあって、正常な結果が何を片づけて何を片づけないのかは不安のスクリーニングにあります。
この頁の仕事が終わるところ
範囲の話を、はっきり書きます。
一回の発作に必要なのは情報で、治療ではありません。そしてその情報はだいたいこの頁にあります。繰り返し来る発作、静かな日にも走っている「次が来る」という恐れ、それを防ぐために組み替えられた一か月 —— これはパニック症として認識されている形で、読み物の問題ではなく臨床の領域です。
いい知らせは狭くて本物です。パニックは、精神保健の中でもっとも治療の効くもののひとつです。 心理療法のコクラン・ネットワークメタ分析では、行動療法と認知行動療法にもっとも強い根拠が示され、追跡の研究は、治療が終わったあとも効果が保たれることを示しています。活性成分は感覚を避けるのではなく近づくことで、それをどう組むかは臨床家の仕事で、記事が処方するものではありません。必要な時間は年単位ではなく週単位のことが多いです。
最初の受診に持っていくといちばん役に立つのは、自己診断ではありません。短い事実の記録です。最初はいつだったか、以来だいたい何回か、手がかりなしに来たものや睡眠から起きたものがあるか、そして普通の一週間のカフェインとアルコール。発症・頻度・きっかけが評価の土台で、多くの人はそれを持たずに来ます。
パニック発作セルフチェックは、発作そのもの・次が来る恐れ・すでに手放したものを別々に読みます。やることが違うからです。これはスクリーニングで、そう書いてあります。
そして、これを抱えて暮らすことが「いなくなりたい」に移っているなら、それは次の予約の話ではありません。今日の話です。 医療機関、お住まいの地域の公的な相談窓口、あるいは信頼できる一人。予約の日まで持たないでください。
出典
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