燃え尽きという言葉は1974年にニューヨークの無料診療所で生まれ、その後の四十年は看護師と教師とソーシャルワーカーの中で測られてきました。いまいちばん多くこの言葉が打ち込まれるのは、隣で眠っている相手のとなりで目を覚ましている人の検索窓です。切れたのは仕事のほうなのか、この生活のほうなのか。
正直な答えは、たいていどちらでもあり、どちらでもありません。燃え尽きは場所ではありません。回復より速く来続ける要求が作る状態であって、その要求が受信箱から来たのか家から来たのかを、状態のほうは区別していません。
2.8%
42か国調査で燃え尽きの水準に達した日本の親の割合
17,409人
その調査で測られた親の数
1時間54分
6歳未満の子がいる世帯の夫の1日の家事関連時間
7時間28分
同じ世帯の妻の時間
職業上の現象という枠が、家の側を無名にしている
定義はマスラックが1981年に作った尺度から来ていて、世界保健機関は2019年にこれを職業上の現象として位置づけました。疾病ではなく、職業上の。日本語での定義の整理と、必ず混ざる語との切り分けは燃え尽き症候群の項目が一節を使って済ませています。この記事はその続きで、職名のつかないほうの版だけを扱います。
職業上、という限定は静かな損害を出しました。家で口座を空にしている人に、それをその名前で呼ぶ許可が与えられていない。制度上の定義が狭いことと、現象が狭いことは別なのに、当事者の側では同じものとして働いてしまいます。
家のほうの数字と、日本の居心地の悪い位置
職場の外で最初にきちんと測られたのは親の燃え尽きでした。2021年にイザベル・ロスカムらの国際チームが42か国17,409人の親を検証済みの尺度で測り、国によって有病率が大きく違うことを報告しています。
- ベルギー: 9.8%
- ポーランド: 9.6%
- アメリカ: 8.9%
- 日本: 2.8%
- スウェーデン: 2.6%
- ドイツ: 1.8%
- 中国: 1.4%
- イタリア: 0.6%
ロスカムらはこの並びを個人主義で読みました。核家族が単独で負荷を抱え、親であることの基準が高い社会ほど高い、と。
日本は、その読みが素直に通らない場所にいます。2.8%は下から四番目です。一方で次の節に出てくる家事分担の偏りは、先進国のなかでも大きいほうに入ります。二つを並べると、説明の候補は二つしか残りません。拡大家族なり保育制度なりが実際に負荷を吸っているのか、それとも閾値を超えている人が「しんどい」と申告しない文化のところで、閾値を数えているのか。
この記事はどちらだとも断定しません。断定できるだけの材料がないからです。ただ、有病率の低さを「日本の親は大丈夫」と読むのは、少なくとも急ぎすぎです。閾値の下にいる大量の消耗は、どの国の数字にも最初から入っていません。
ワンオペ育児という、すでにある言葉
日本語には、この状態の条件を指す言葉があります。ワンオペ育児。負荷配分の問題をこれ以上ないほど正確に名指しした語で、しかも生活の側から自然に出てきた語です。
無いのは、その条件が続いた結果を指す語のほうです。燃え尽きという語は職場に貸し出されたままで、家に戻ってきていません。条件に名前があって結果に名前がないと、起きていることは性格の問題として処理されます。
数字のほうを見ます。総務省の社会生活基本調査によれば、6歳未満の子がいる世帯で、夫の一日あたりの家事関連時間は1時間54分、妻は7時間28分でした。育児だけを取り出すと夫が1時間5分、妻が3時間54分です。
- 夫の家事関連: 114分
- 妻の家事関連: 448分
- 夫の育児: 65分
- 妻の育児: 234分
夫の側は五年前より家事が13分、育児が16分増えています。方向は動いています。それでも家事関連の合計で四倍近い差が残っている。
そして時間は、見えている部分です。見えない部分に名前をつけたのはアリソン・ダミンガーの2019年の研究で、35組70人への聞き取りから、あらゆる作業の下に敷かれている認知的労働を取り出しました。先を読むこと、選択肢を洗うこと、決めること、確認して回ること。決定は比較的よく分担されていました。分担されていなかったのは残り全部です。子どもの靴がそろそろ小さいと気づくこと、どの書類がいつまでかを覚えていること、頼んだことが終わったかを見に行くこと。
この研究の標本は米国の夫婦です。日本の家庭にそのまま移せるとは書きません。ただ、作業が一人の頭の中で起きるので当事者のどちらからも見えないという機序のほうは、時間配分の数字が示す環境と噛み合います。
手伝ってもらっているのに消耗する理由
「でも協力的なほうだと思う」という文の下にあるのは、この機序です。
手伝うのは作業をすることです。抱えるのはリストを持っていることです。人は絶え間なく手伝われながら、リストに何が載っているかを知っている唯一の人であり続けられます。そして先に空になるのは、そちらの口座です。
| 要素 | 職場での見え方 | 家での見え方 |
|---|---|---|
| 枯渇 | 週末が効かなくなる。日曜の午後がもう月曜 | 休んでいるのに回復が起きない。眠りが届かない層の疲れ |
| 心理的な距離 | 相手が案件になる。同僚が段取りになる | 相手が予定表になる。手当てしている当人に苛立つ |
| 効能感の低下 | 昔はもっとできたはずだという感覚 | 自分は駄目な親だ、駄目な配偶者だ、そして証拠なら山ほどある |
真ん中の行がいちばん報告されません。恥ずかしいからです。世話をしている相手に苛立つという事態は、内側からは道徳的な失敗として届きます。そうではありません。口座の残高警告で、しかも手を打てる程度には早く来ます。三つのうちどれが一番高いかで次にやることが変わる、という読み方は燃え尽き症候群のほうに書きました。
仕事の疲れと、家の疲れの見分け方
二つは排他的ではありませんし、互いに燃料を送り合います。それでも実務的な違いが一つあって、それは研究者が燃え尽きとうつを分けるときに使うのと同じ検査です。要求が変わったときに何が起きるか。
アヤラ・パインズは1990年代に、同じ三要素の崩れが仕事ではなく関係に向いたものとして夫婦間の燃え尽きを記述しました。介護者の負担についての2014年の臨床レビューは、負荷がいちばん重いのは一人で担っている介護者で、しかもその負荷は手当てが「なんとかやれている」ように見えるという理由で不可視になると報告しています。
上の比較の最後の行が、問題のほとんどです。断らずに引き受けられた役割は、一度も争われていないので、一度も配分し直されません。そこは人間関係の線引きの話と地続きで、仕事側の消耗が主因なら燃え尽きへの働き方からの対処のほうが近い。
どちらの口座が空なのかを読む
ここまでのどれも治療ではありません。何にも反応しなくなった低さは医療の領分ですし、関係を続けるかどうかは質問紙が答えるふりをしてよい問いではありません。結果にできるのは、負荷と人を切り離すことです。空の口座の底にいる人が、自分ではできない切り離しがそれです。
燃え尽きチェックは三つの要素を別々に読んで、どれが一番高いかを返します。家に疲れが住んでいる人にとって、たいてい示唆が多いのは線引き診断のほうです。関係の燃え尽きは、一度も引かれなかった線であることがとても多いからです。
回復の最初の合図は、よく眠れた感覚ではありません。リストに載っている何かを、自分より先に誰かが気づいた週が来ることです。
Sources
- World Health Organization (2019). Burn-out an occupational phenomenon: International Classification of Diseases, 11th revision.
- Maslach, C., Leiter, M. P. (2016). Understanding the burnout experience: recent research and its implications for psychiatry. World Psychiatry, 15(2).
- Roskam, I., et al. (2021). Parental burnout around the globe: a 42-country study. Affective Science, 2.
- Daminger, A. (2019). The cognitive dimension of household labor. American Sociological Review, 84(4), 609-633.
- 総務省統計局 (2022). 令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果.
- Adelman, R. D., Tmanova, L. L., Delgado, D., Dion, S., Lachs, M. S. (2014). Caregiver burden: a clinical review. JAMA, 311(10).
- Bianchi, R., Schonfeld, I. S., Laurent, E. (2015). Burnout-depression overlap: a review. Clinical Psychology Review, 36.
- Mikolajczak, M., Brianda, M. E., Avalosse, H., Roskam, I. (2018). Consequences of parental burnout: its specific effect on child neglect and violence. Child Abuse & Neglect, 80.
- Freudenberger, H. J. (1974). Staff burn-out. Journal of Social Issues, 30(1).