制度の側の前提を先に置いておきます。厚労省のモデル就業規則は2018年1月に改定され、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止の規定が削除されました。原則容認の方向に書き換えられているので、まず確かめるべきは世間ではなく、自社の就業規則の現在の条文です。そこが黒であれば、専業化はいきなり二択になります。灰色なら、走らせながら確かめる余地が残ります。
だいたい何が起きているか
その企画は事業ではなく、本業からの避難所になっている。 避難所は、行くと気分が良くなる場所です。それは事業の指標ではありません。本業が耐えられるものになったとき、その企画がまだ面白いかどうかが、いちばん正直な検査になります。
自分の余剰時間と、本業の最良の時間を比べている。 副業の時間はたいてい、いちばん元気な二時間です。専業化すると、その作業が一日十時間のほうに来ます。同じ作業ではありません。
自分の熱意抜きの状態を見たことがない。 熱意は一年半くらい持ちます。悪い月を一度、義務として運んだことがあるかどうかが、専業化の唯一まともな予行演習です。
金額の問いを、間違った尺度で立てている。 「いくら稼げたら辞められるか」は、生活費だけでなく、税と社会保険と、収入の分散を入れて初めて答えになります。月収ではなく、悪い三か月を並べたときの合計で見てください。
欲しいのは自律であって、経営ではない。 これが実は最も多い。自律は、独立でなくても買えることがあります —— 裁量の大きい職務、勤務形態の変更、契約の形。経営には、値付け、請求、営業、確定申告が付いてきます。それが欲しいのかどうかは、別の問いです。
跳ぶ前にやること
- 熱意抜きで三か月運ぶ。 やりたくない日にも約束どおりに出す。そこで残った数字が、専業化後の数字に近い。
- 悪い三か月の合計で計算する。 最良の月ではなく。そして税と社会保険を引いた後の額で。
- 自律と経営を分けて書く。 欲しいものの一覧を作り、どれが独立でしか手に入らないかに印をつける。印の付かない項目が多いなら、答えは転職か職務の交渉のほうです。
- 収入の分散を見る。 一社に依存しているなら、それは独立ではなく、社会保険の無い雇用です。
何によって変わるか
専業化の判断がこじれるのは、収支ではなく、自分の中の二つの価値観が正面からぶつかっているからです。自律と安定、あるいは成長と達成。片方を選べば片方が痛むので、試算をやり直し続けることになります。価値観の検査はその組を名指しします。名指しされたあとは、計算の問題ではなく、どちらの痛みを引き受けるかという問いになります。それは短時間で決められます。
もう一点。好きな作業が収入になると何が起きるかについては、内発的動機づけの項に材料があります。必ず壊れるわけではありませんが、壊れ方には既知の形があり、先に知っておくと対処できます。 没頭そのものの条件についてはフロー状態の項が扱っています。