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一夫一妻制

同時に一人とだけ関係を持つ形。この言葉が決めていること、決めていないこと、日本の制度としての来歴と、研究でわかっていること。

関係の科学

一夫一妻制とは、同時に一人の相手とだけ恋愛的・性的な関係を持つという関係の形のことです。英語の monogamy の訳語で、日本語ではモノガミーとも言います。制度としては婚姻が一対一であることを指し、関係の話としては二人のあいだの排他性の約束を指します。決めているのは、この一点だけです。

その周りには、この言葉が実のところ何も決めていない領域が広がっています。何を違反と呼ぶかは、そこに含まれません。二人が同じように一夫一妻を望んでいて、なお違反の線が一致しないことは普通に起きます。

「一夫一妻」が決めていないこと

厳密に言えば、一夫一妻が決めているのは一人の相手との恋愛的・性的な排他性だけです。決まっていると思われがちで、実際には決まっていないものを並べます。

  • 感情的な排他性。 恋愛感情を含む親密な関係を、性的な接触がなくても違反と呼ぶのか。英語圏には emotional cheating という定着した言い方がありますが、日本語では「浮気」の範囲をその都度決めることになります。
  • 視線と連絡。 SNS でのやりとり、見ているだけの閲覧、消さずに残っているマッチングアプリ。
  • 過去。 元交際相手との連絡をどこまで、どんな形で許すのか。
  • 期間。 「いまは」なのか「この先ずっと」なのか。
  • 生活の統合。 同棲するか、家計を一つにするか、婚姻届を出すか。一対一であることと生活を統合することは別の決定で、事実婚は生活を統合しながら届を出していない形の名前です。

この話をしていない二人は、一夫一妻に合意しているのではありません。言葉に合意しているだけです。 どこからを違反と感じるかには個人差があり、信頼のパターンのように傾向として出る部分もあります。

日本で一夫一妻制が制度になったのはいつか

日本語で「一夫一妻制」と聞いて思い浮かぶのは、昔からある当たり前の形でしょう。制度としては、そこまで古くありません。

家族法として一夫一妻が確立したのは1898年の明治民法です。 それ以前、明治初期の新律綱領では妾が親族として法的に扱われていました。制度としての歴史は百数十年で、キリスト教圏の読者が前提にしている長さとは違います。

そして、最初から対称だったわけでもありません。 旧刑法の姦通罪は妻の不貞だけを処罰し、夫の同じ行為は対象外でした。この規定が消えたのは1947年です。

現在の整理はこうなります。重婚を禁じているのは民法732条と刑法184条で、対象は婚姻届を二重に出すことです。配偶者以外と関係を持つこと自体は犯罪ではなく、民法上の不貞行為として慰謝料請求の対象になります。届を出していない関係に重婚罪は及びませんが、一方に法律婚がある内縁(重婚的内縁)は原則として保護されず、法律婚が事実上破綻している場合に例外を認めた判例があります。つまり日本の法が守っているのは戸籍上の一対一で、関係の中身の排他性ではありません。

実際に多いのは連続的一夫一妻

一人の相手と一生、というのは理想としてよく語られますが、実際に多い形ではありません。多いのは連続的一夫一妻、つまり一時期には一人ずつで、一生のうちに相手が何度か変わる形です。フィッシャーの人類学的な整理では、終生の一対よりもこちらがヒトの既定値に近いものとして扱われます。

生物学には社会的一夫一妻という語もあり、人間の場合を考えるときに役に立ちます。生活と子育てを共有する一対を指し、性的な排他性は含意しません。社会的に一対になる種のうち性的にも排他的な種はごく少なく、ヒトもそこに含まれます。これは頻度の記述であって、推奨ではありません。

日本で目につきやすいのは、約束だけが残って中身が止まる形です。性的排他性の合意はそのままで性生活がないセックスレスは、一夫一妻の失敗というより、一夫一妻が何を保証していないかの例として読めます。

研究でわかっていること、そして誰を調べた研究か

よく流通している理解と結果が食い違うものが三つあります。

構造は結果を予測しません。 コンリーらの比較研究では、合意のある非一夫一妻の関係は満足度・コミットメント・信頼のいずれでも一夫一妻と同水準でした。差が出るのは構造ではなくコミュニケーションの質の側です。ただし、この比較のサンプルは北米の英語話者のオンライン回答者が中心で、日本のデータではありません。 一貫して差が出るのは偏見のほうで、同じ関係の説明でも非一夫一妻と聞かされると評価が下がります。

一夫一妻の内側での不貞は少なくありません。 推定値は調査方法と何を数えるかで大きく変わり、正直に要約すると小さい数字にはなりません。ここから言えるのは、一夫一妻は人が破る約束であって、望みが生じないようにする仕組みではないということです。

一人の相手に求める量が増えました。 フィンケルの suffocation model は、配偶者一人に親密さ・成長・自己実現・友情を同時に期待する状態を指します。米国のデータに基づく議論ですが、世帯が小さくなり地域の関係が薄くなる方向は日本でも同じです。負荷をかけているのは排他性の条項ではなく、期待の総量のほうです。

シュミットの48カ国調査には日本も含まれています。社会性的志向の平均は国によってはっきり違い、一夫一妻が既定値である国は多くても、その既定値の厳しさは同じではありません。

話しておくと効く四つの問い

一夫一妻でいるなら、考える価値があるのは続けるかどうかではなく、二人が具体的に何を指しているかです。先に決めておけば、具体的な事例が来てから決めることにならずに済みます。

何が違反なのか、例を挙げて。何も起きていなくても伝えてほしいことは何か。この関係では満たされない必要が何で、それはいまどこへ向かっているのか。そして、どちらかが破ったときにどうするのか、修復するのか終わるのか。

最後の問いは避けられることが多く、答えが決まっていると前の三つの意味が変わります。 答えのある関係が、問うたせいで脆くなることはありません。

出典

  • · Conley, T. D., Matsick, J. L., Moors, A. C., Ziegler, A. (2017). Investigation of Consensually Nonmonogamous Relationships. Perspectives on Psychological Science.
  • · Fisher, H. (2016). Anatomy of Love, revised ed. — on serial monogamy and pair-bonding.
  • · Schmitt, D. P. (2005). Sociosexuality from Argentina to Zimbabwe. Behavioral and Brain Sciences.
  • · Perel, E. (2017). The State of Affairs — on infidelity inside monogamous agreements.

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