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オープンリレーションシップと非一夫一妻(ENM)

関わる全員が知って同意しているうえで独占をやめる関係の総称。オープンな関係もポリアモリーもこの傘の下に入る。

関係の科学

合意のある非一夫一妻(英語圏では ENM、研究文献では CNM)とは、関わる全員が知っていて同意しているうえで、一対一の独占をやめている関係の総称です。日本語では「オープンな関係」「非モノガミー」とも呼ばれます。一つの形の名前ではなく傘の名前で、オープンリレーションシップ、ポリアモリー、スワッピングはどれもこの下に入ります。

日本語圏では、傘の名前より中身の名前のほうが先に知られました。そのため「ポリアモリー」が全体の呼び名として使われていることが多い。このページの主な仕事は、その一語にまとめられてしまった別物を分けることです。

「倫理的」が道徳の話に聞こえてしまう

ethical を「倫理的」と訳すと、一夫一妻より道徳的に上だという主張に聞こえます。研究文献が ethical ではなく consensual(合意のある)を使うのは、この読み違いを避けるためです。ここで言われているのは道徳の高さではなく、同意が全員から取れているかどうかという手続きです。

手続きとして見ると、条件は三つあります。

  • 知らされている —— 抽象的な話に頷いただけで、具体的な形はあとから聞かされた、という状態は同意ではありません。
  • 影響を受ける全員 —— 外側の相手も含みます。自分が非一夫一妻の配置の中にいることを、あとで気づくのではなく先に知っている必要がある。
  • 続いている —— 二年前の状況で交わした了解は、誰も取り下げていないという理由だけで今も生きているわけではない。一度取って更新しない同意は形式です。

別れたくないから頷いた。事後に報告した。この二つは、呼び名が何であれ合意のある非一夫一妻ではなく、語彙のついた浮気に近いものです。

ポリアモリーやオープンリレーションシップとの違い

英語で一つの傘にまとまっている語が、日本語では別々の文脈で育ちました。読みにくさはそこから来ています。

  • ポリアモリー —— 恋愛感情を含む複数の関係。価値観やジェンダーの文脈で語られることが多い語で、最もよく話題になる形ですが、最も多い形ではありません。
  • オープンリレーションシップ / オープンマリッジ —— 二人の恋愛関係は二人で閉じたまま、性的にだけ開く形。日本語で実際に検索されているのはこの語です。
  • スワッピング(夫婦交換) —— カップル単位の性的な非排他。日本語ではこの語が1970年代からアダルト寄りの語感を持っているので、ポリアモリーと並べて語られることがほとんどありません。構造の上では同じ傘に入るのに、日本語ではこの三つが同じ家族だという感覚自体が薄い。
  • ポリフィデリティ —— 三人以上の閉じたグループで、集団として排他的。

逆側の端も押さえておくと輪郭が出ます。友達以上恋人未満のように、そもそも独占の約束をまだしていない状態は、非一夫一妻ではありません。交渉していないことと、独占をやめる合意をしたことは別です。

日本で実際に問題になるのは慰謝料のほう

誤解を一つ先に片付けます。合意のある非一夫一妻は重婚ではありません。 重婚罪が禁じているのは婚姻届を二重に出すことで、ここに挙げたどの形もその手続きを通らないので、当たりません。

日本で残るのは民事の側です。既婚者が配偶者以外と関係を持った場合、配偶者は、相手になった第三者に対して慰謝料を請求しうるという枠組みが日本にはあります。英語圏の ENM の議論にこの論点はほとんど出てきません。配偶者の同意があったこと、あるいは婚姻関係がすでに破綻していたことは反論の材料になりますが、口頭の了解だけでは立証の段で争いになりやすい、というのが実務上の理解です。事実婚の関係でも同じ種類の争いは起きます。

もう一つ、日本語圏だけで広まった言い方があります。「セカンドパートナー」——既婚者が配偶者の了解のもとで持つ、性的関係を伴わないとされる第二のパートナーです。英語の ENM 語彙に対応する語はありません。ただし見る場所は変わらず、了解が具体的に取れているのか、それとも聞きたくないことを聞かずに済ませているだけなのかが、この語の分かれ目になります。

続くかどうかを決めるのは構造ではない

比較研究では、満足度・コミットメント・信頼のいずれも一夫一妻の関係と同水準でした。同じ分類の中のばらつきのほうが、分類のあいだの差より大きい。 構造を選んだ時点では、まだ何も決まっていません。

ただし標本はほぼ英語圏です。 よく引かれる「成人の五人に一人が経験している」という数字も米国の調査で、日本の数字として使えるものではありません。日本語圏の同等の統計はまだありません。

決めているのは地味なほうです。言いにくいことを手遅れになる前に出せるか、嫉妬を裏切りの証拠ではなく自分の側の情報として扱えるか、衝突のあとに関係が元に戻るか。このあたりは性格というより測れる傾向なので、構造を組み替える前に自分の側を見ておく価値があります(愛着スタイル診断)。

最後に順番の話を一つ。一夫一妻でうまくいかなくなったから開く、という動機はほぼ機能しません。 合意のある非一夫一妻は、既定値を外して継続的な交渉に置き換える変更です。いま交渉ができていない関係は、交渉の量が増えることで悪くなります。

出典

  • · Conley, T. D., Matsick, J. L., Moors, A. C., Ziegler, A. (2017). Investigation of Consensually Nonmonogamous Relationships. Perspectives on Psychological Science.
  • · Rubin, J. D., Moors, A. C., Matsick, J. L., Ziegler, A., Conley, T. D. (2014). On the margins: considering diversity among consensually non-monogamous relationships.
  • · Haupert, M. L., Gesselman, A. N., Moors, A. C., Fisher, H. E., Garcia, J. R. (2017). Prevalence of experiences with consensual non-monogamous relationships. Journal of Sex & Marital Therapy.

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