ポリアモリー
全員の合意のうえで複数の恋愛関係を持つこと。形の種類、研究でわかっていること、そして一夫一妻にはない要求。
関係の科学
ポリアモリーとは、関わる全員が知っていて合意しているうえで、同時に複数の恋愛関係を持つことです。語源はギリシャ語とラテン語の合成で「複数の愛」。重要なのは二つ、複数であることと、合意があること。後者が欠けたものはポリアモリーではなく、浮気です。
合意のある非一夫一妻の一種で、恋愛感情を含む点が区別になります。性的にだけ開いていて感情的には閉じている形は、非一夫一妻ではあってもポリアモリーではありません。
日本での法的な位置づけ
よくある誤解を先に片付けておきます。ポリアモリーは重婚ではありません。
重婚罪(刑法184条)が禁じているのは、婚姻届を二重に出すことです。ポリアモリーの関係は法律上の婚姻ではないので、ここには当たりません。
ただし、既婚者が配偶者以外と関係を持つ場合は別の問題になります。 民法上の不貞行為として、配偶者から慰謝料を請求される可能性がある。ここで「配偶者の合意がある」ことが抗弁になるかは、合意の内容と立証の程度によります。口頭の了解だけでは争いになりやすい、というのが実務上の理解です。
つまり日本では、未婚者同士のポリアモリーに法的な障害はなく、既婚者が関わる場合は民事上のリスクが残るという整理になります。
形の種類
ポリアモリーは一つの形ではなく分類名で、実際の形はかなり違います。二人のポリアモリーの人が、ほとんど共通点を持たないこともあります。
- 階層あり —— 一つの関係を主とし、住居や家計や子どもを共有する。他は明示的に副。最も多く、同時にコミュニティ内で最も批判されている形でもあります。副の側が、自分で決めていない制約を実際に負うからです。
- 階層なし —— どの関係も構造上の優先を持たず、約束は関係ごとに個別に結ばれます。
- [ポリフィデリティ](/base/polyfidelity) —— 三人以上の閉じたグループで、集団として排他的。三人の場合がスループルです。
- ソロポリアモリー —— 複数の関係を持ちつつ、どれとも家計や住居を統合するつもりがない形。
覚えておくと通じる語が二つあります。メタモアは「パートナーの他のパートナー」、コンパージョンは「パートナーが他の人と幸せそうにしているのを見て自分も嬉しくなる感覚」です。コンパージョンは必須条件ではなく、時間が経てば自動的に出てくるものでもありません。これが出ないから自分はポリアモリーに向いていない、と考えるのは、よくある自滅の仕方です。
研究でわかっていること
研究の蓄積は一夫一妻に比べれば浅いのですが、結果は多くの人が予想するより一貫しています。
満足度と信頼は同程度。 コンリーらの比較研究では、合意のある非一夫一妻の関係は、満足度・コミットメント・情熱・信頼のいずれでも一夫一妻の関係と同水準でした。構造の違いは結果を予測しません。
嫉妬は消えません。 避けるのではなく、話して処理するものとして扱われます。一貫している違いは、ポリアモリーの文脈では嫉妬が「裏切りの証拠」ではなく「満たされていない何かの情報」として扱われることです。
[愛着スタイル](/base/earned-secure-attachment)との関係。 回避傾向の高い人が非一夫一妻に関心を示しやすいという所見がありますが、実際にうまくやっている人が回避型だという意味ではありません。関心と適性は別のものです。
一夫一妻にはない要求
構造そのものは結果を予測しませんが、要求される技術の量は明らかに多いです。
言語化。 一夫一妻は多くのことを既定値に任せられます。ポリアモリーでは、既定値がないので全部話すことになります。何が許されて何が許されないか、どこまで共有するか、新しい関係をいつ伝えるか。
予定と体力の管理。 抽象的な話ではなく、単純に時間が足りなくなります。
嫉妬を、自分の側の情報として扱う練習。 嫉妬を感じたときに相手の行動を止めるのではなく、自分が何を必要としているかを探す。これは訓練であって、性格ではありません。
そして、一夫一妻がうまくいかなかったから移る、という動機はほぼ機能しません。 一夫一妻で処理できていない葛藤は、関係が増えれば増えるほど増幅します。ポリアモリーは関係の問題の解決策ではなく、より多くの技術を要求する別の形です。
出典
- · Conley, T. D., Matsick, J. L., Moors, A. C., Ziegler, A. (2017). Investigation of Consensually Nonmonogamous Relationships. Perspectives on Psychological Science.
- · Moors, A. C., et al. (2015). Attached to monogamy? Avoidance and consensual non-monogamy. Journal of Social and Personal Relationships.
- · Balzarini, R. N., et al. (2019). Demographic comparison of primary and secondary relationships in polyamory. Journal of Sex Research.