この問いには二つの塊があります。新卒で複数の内定を持っている人と、中途で二社の条件を並べている人。制度がまるで違うので、順に扱います。共通しているのは一点だけで、比べているのは会社ではなく、そこで過ごす二年のほうだということです。
新卒で、内定を複数持っている場合
まず、これは例外的な状況ではありません。就職みらい研究所の調査では、2025年卒の大学生の内定辞退率は2024年6月1日時点で56.4%でした。半分以上が辞退しています。 複数持つことも、断ることも、採用側の計算にすでに入っています。断ることを不義理として抱え込む必要はありません(伝え方を早く、正確にする理由はありますが、それは礼儀の問題で、罪の問題ではありません)。
そのうえで、新卒の比較には固有の壁があります。職務が決まっていないので、仕事の中身を比べられない。 比べられるのは、配属の分布、教育の設計、最初の三年で身につく技能の種類、そして人の残り方です。だから訊くべきは「御社の社風」ではなく、「今年の新卒は、どの部署に何人配属されましたか」と「一年目の人は一週間のうち何に最も時間を使っていますか」です。この二つに答えられない会社は、まだ決めていないか、言いたくないかのどちらかで、どちらも情報です。
もうひとつ。三年以内離職率は会社規模で大きく割れます(1,000人以上27.0%、5人未満57.5%)。これは大企業が良いという話ではなく、規模が違えば「合わなかったときに何が起きるか」が違うという話です。小さい組織は合ったときの伸びが速く、合わなかったときの逃げ場が少ない。それは好みで選ぶべき性質で、優劣ではありません。
中途で、二社を並べている場合
比べているのは提示条件ではなく、その後の二年です。 給与は初日から分かり、上司と裁量と学習は三か月後にしか分かりません。だから面談で訊くのは待遇より、「この職務で、去年いちばん難しかったのは何でしたか」のほうです。
すでに決まっていて、許可が欲しいだけのことがあります。 表をつくり直している人の多くはこれです。片方を選んだ自分を想像して、安堵が来るか落胆が来るかを見てください。落胆が来たなら、その表は答えではなく手続きです。
金額が、見えていない仕事をしていることもあります。 提示額の差が、不安の値段を払っているのか、単に市場の評価なのかは分けたほうがいい。転職で賃金が上がるのは40.5%で、上がらない人のほうが多数です。上がる側に入るなら、それはそれで大きな事実ですが、上がったことが合っていることの証明ではありません。
今週やること
- 二年後に無くて最も悔やむものを一つ書く。 金、裁量、学び、安定、上司。一つだけ。
- 両方に、同じ具体的な質問をする。 「入って最初の三か月で、私は何をしていますか」。答えの粒度がそのまま組織の粒度です。
- 返事の期限を訊く。 延ばせるかどうかを訊くのは失礼ではなく、社会人としての通常の手続きです。延ばせない理由を説明できない相手のほうが例外です。
何によって変わるか
二つの提示は、たいてい別々の軸で強い。だから比較が難しいのではなく、軸に順位が付いていないから難しい。価値観の検査は五つの軸を四分で並べ、どの二つが引っ張り合っているかを言います。順位が出ると、表は不要になります。表の重みを直し続けていたのは、順位を決めていなかったからです。決断そのものに疲れているなら、決断疲れの項を先に読むほうが早いこともあります。