ここを読みに来る人のほとんどは、もう言われたことを試しています。寝室は涼しくしました。コーヒーは昼で止めました。入眠前の手順も作って、九日くらい続きました。それでも灯りが実際に消える時刻は動いていない。面白いのはそこです。これだけ確実に外れる助言は、だいたい失敗しているのではなく、別のものを狙っています。
寝るつもりだった時刻より遅く寝ること、しかも自分以外の何にも止められていないのに遅く寝ること。これには研究上の名前があります。Kroese らは2014年に、これを睡眠障害ではなく自己制御の問題として記述しました。その枠組みは今も生きています。ただ、枠組みは次の一手を渡してくれません。この行動は原因ではなく到着地点で、かなり違う四つの状況が同じ零時半に着き、共通しているのは時刻だけです。
日本語には定着した呼び名があります。リベンジ夜更かし、または報復性夜更かし。中国語の報復性熬夜から入ってきて、いまでは一般語として通っています。名前があることの効用は、ふつう「性格の欠陥ではないと分かる」ところだと言われますが、この名前にはもう一つあって、原因の方向まで指しています。指しているのは日中の自由時間の不足のほうで、意志の弱さのほうではありません。ただし指しているのは四本のうちの一本だけで、残りの三本はこの名前では説明されません。
38.5%
睡眠6時間未満の成人男性、令和5年
43.6%
同じ年の成人女性
20.2%
一気見をする人のうち週数回以上の割合
睡眠衛生は「眠ろうとしている人」への助言
部屋を涼しく、カフェインを控え、時刻をそろえ、就寝一時間前は画面を見ない。Irish らは2015年にこの項目を一つずつ検証して、根拠の強さは項目ごとにばらばらで、助言の見た目の統一感よりはるかに個人差が大きいと報告しました。Chung らは2018年に、この種の教育を単独で不眠症の治療として与えた場合の成績を調べ、単独の介入として推奨できる水準にないことを示しています。厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023 も、国の文書として読めば公衆衛生の助言です。それは立派な役目で、個人の夜更かしを直す道具とは別の役目です。
ただ、ずれの本質は効果量の話ではありません。いま挙げた項目はどれも、ある特定の人を前提にしています。布団の中にいて、暗くして、本気で眠ろうとして、眠れていない人。深夜一時に灯りをつけて背筋を伸ばして座り、時計もはっきり見えている人は、その人ではありません。最初から一度もその人ではなかった。
何か月も助言が外れたのは、意志の問題ではありませんでした。宛先の問題です。
同じ零時半に着く四本の道
| 動かしているもの | 深夜の一時間が解いている問題 | 実際に動かすもの |
|---|---|---|
| 取り返したい時間 | 一日のどこも自分のものではなかった | 日中に自分の時間を、探すのではなく置く |
| 寝るまでの手数 | まだ始めていない手順が残っている | 手数を減らし、前倒しで済ませる |
| 明日への抵抗 | 消灯が明日の始まりになっている | 起きているうちに明日を片付ける |
| 画面の引力 | やめろと言う設計がどこにもない | 終わりを外から足す |
右の列がこの記事の主張です。問題が四つ、答えが四つ、そして睡眠の助言に隣接しているのは二番目だけ。十二の場面はこの四本を重症度抜きで振り分けます。どの道から来ても外からは同じに見えるので、振り分けは本人の記憶ではなく設問でやったほうが当たります。
日中がぜんぶ、ほかの人のものだったとき
Hill らは、働き始めて数年の二十八人に、あの一時間は何のための時間なのかを聞いています。七つの主題が出てきて、参加者が繰り返し戻ってきたのは自分の時間が必要だということでした。その隣に二つ並んでいて、この道に助言が弾かれる理由はそこに書いてあります。続けるための自己交渉と、睡眠の価値についての完全な知識です。あの研究に、教えられる必要があった人は一人もいませんでした。論文の題は参加者の言葉から取られていて、満足でもあり破壊的でもある、と言っています。
誰にも割り当てられていない一時間は、休息の一時間より価値が高い。だから休息では代わりにならない。
この一行には、睡眠の隣では普段読まれない文献の裏付けがあります。Sonnentag と Fritz は、人が仕事から回復する過程を測る尺度を作る途中で、回復がひとつのものではなく四つに分かれることを見つけました。心理的距離、リラクセーション、熟達、そしてコントロール。コントロールは独立した因子です。その時間に何が起きるかを自分が決めているという経験であって、その時間が安らかかどうかとは別。だから、誰かが組んだ心地よい晩を過ごしても、深夜の一時間への渇きはまったく減りません。リラクセーションは届いた。コントロールは届かなかった。
つまりこの道の処方は、睡眠の処方ではありません。日中に、そこを生きている本人のものである時間が入っていなければならない、という話です。二十分でも成立します。そして二十分が効くかどうかを決める条件が二つあります。中身が割り当てではなく自分で選んだものであること。そして隙間から拾うのではなく、予定として置かれていること。拾った時間はコントロールの感覚を渡さないので、深夜の一時間が満たしているものを満たしません。たまたま好きだった家事で埋まった晩は代わりになりませんし、なったこともありません。
日本でこの道が最も濃くなる年代は、統計の形にも出ています。令和5年の国民健康・栄養調査では、睡眠が6時間未満の人は男性38.5%、女性43.6%で、4割を超えるのは男性の30〜50歳代と女性の40〜60歳代です。そこは小さい子の育児と親の介護と役職が重なる年代そのもので、ワンオペ育児、持ち帰り仕事、長い通勤、帰宅してからの家事、交代勤務が同時に乗ってくる場所でもあります。
ここには、言いにくいほうの答えがある版があります。小さい子を一人で見ている人、介護をしている人、交代勤務の人、予定表を全部ほかの人が書いている人にとって、深夜の一時間は明日のお金で本物の問題を解いています。早く寝ろと言うのは、手元にある唯一の自主権を返せと言うのに等しい。その人はそうしませんし、そうするよう期待されるべきでもありません。一週間のどこにも二十分が見つからないなら、取り組む対象は就寝時刻ではなく一週間の形で、それは何を断るか何を手放すかの話になります。
前もって決めておくことには測れる効果があり、どこまで効くのかも分かっています。Valshtein らは短い書き出しの課題を二つの試験で試しました。望む結果と、邪魔しているものを並べて書き、そのうえで条件と行動を結んだ具体的な計画に落とす。どちらの試験でも、予定した就寝時刻と実際の時刻の差は縮みました。自己申告の睡眠時間は変わっていません。つまりこの技法が動かすのは差のほうで、時間を買ってくれるわけではない。
言葉そのものの出どころと、研究が何を測ってきたかはリベンジ夜更かしの詞条にあります。この記事が扱っているのは振り分けのほうです。
決めてから立ち上がるまでの十歩
二本目は、部屋の向こうから見ると一本目と同じ姿で、中身はほとんど逆です。本人は眠りたい。四十分前に声に出して言っています。決断と布団のあいだにあるのは手順で、その手順のどこかに、自分では始められない一歩があります。
Nauts らは2016年にこれを正面から名指ししました。嫌なのは睡眠ではない。睡眠にくっついている準備のほうです。歯を磨く、顔を洗う、コンタクトを外す、着替える。どれも難しくはなく、どれも面倒で、面倒がいちばん耐えにくい時刻に来ます。この研究の予備的なデータは、就寝前の手順への嫌悪が就寝の遅さに寄与していることを示しました。
Kamphorst らは同じ一時間を資源の側から見て、日中に欲求を我慢した回数が多かった人ほど就寝を先延ばしにしていたと報告しています。ただし自己申告に乗っていますし、この結果が属する枠組み自体が追試で苦戦してきました。だから、残量が尽きるという法則の証拠としてではなく、その晩がどう感じられるかの記述として読むのが妥当です。
いずれにしても直し方は環境の側で、ほとんど機械的です。九時にできることは九時にやる。疲れの手前側にまだ余力があるうちに済ませておく。深夜の手順を、立ち上がって灯りを消すところまで削る。充電器は別の部屋に置く。これは徳の話ではなく、決断をどうせ歩く距離に変換する作業です。そしてソファを何とかする。この道の本当の罠はそこで、ソファで寝落ちしても手順は免除されず、起きる動作が一つ増えるだけです。深夜一時に立たされる版の本人には、十一時の本人より残っていません。
この道に必要なのは短い手順表で、強い性格ではありません。四本のうちいちばん安く直り、そして本人がいちばん自分を責める道でもあります。外からは、どうでもいいと思っている人と見分けがつかないからです。
明日に向かって起きている
三本目は今夜の話ではありません。睡眠は明日が入ってくる扉なので、本人は灯りをつけたままその前に立っています。
暗さが難所になる理由は、Harvey の不眠症の認知モデルが説明しています。心配とそれに伴う監視は、最初のきっかけとは無関係に、それ自体で睡眠の問題を維持します。そして部屋が静かになる瞬間は、その日はじめて、競合する入力が何もない瞬間です。何かが流れていれば考えの行き先はありません。止めれば考えが始まり、しかも午後四時ごろから振り切ってきたものから始まります。だから次の一話が流れる。一話の話ではないのです。
Exelmans と Van den Bulck の結果はここにきれいに合います。一気見は睡眠の質の低さ、疲労感の強さ、不眠の症状の多さと結びつき、ふつうのテレビ視聴は結びつきませんでした。そして認知的な就寝前の覚醒が、その関係を完全に媒介していました。中身が犯人ではない。スイッチが入ったままの状態が犯人です。
日本でこの道がいちばん読みやすく出るのは日曜の夜です。ほかの晩と同じ晩で、同じことをしていて、向こう側にあるもののせいで全体の手触りが違う。月曜の朝の重さを知っている人には説明が要りません。
ここは睡眠衛生の向きが最もはっきり間違う場所でもあります。より暗く、より静かで、涼しくて、画面のない部屋。それは本人が先送りしている条件の正確な記述で、それを解決策として渡すのは、避けている当のものを増やして渡すことです。
効くのは、横になって暗い中で明日と交渉するのをやめて、まだ立っていて能力があるうちに明日を片付けることです。明日いちばん最初にやることを一行、夜の早い時間に書いておく。暗闇が作業にかかる材料のかなりの部分は、悪い明日ではなく輪郭のない明日だからです。心配そのものには日中に枠を一つ渡して、紙の上でやる。日曜については、本当にやりたいことを夜遅くではなく早い時間に置く。日曜は休ませろという標準的な助言は日曜を空にしがちで、空はこの道がいちばん扱えないものです。
この道の下にあるのはたいてい不安で、睡眠はそれが見える場所に過ぎません。夜だけでなく日中も身構えて過ごしているなら、治療すべき対象は就寝時刻ではない。そして輪を名指ししておく価値があります。遅く寝るほど明日は重くなり、重い明日は次の夜をさらに遅くします。実際の損害を出しているのはこの輪です。
手の中のものには、終わりが設計されていない
四本目には、設計の話の正直な版がふさわしい。偶然できたものは一つもありません。自動再生があるのは視聴時間が測れるほど伸びるからで、無限スクロールがあるのは底のあるページは人が離脱するからで、次の一戦が前の一戦の決着より先に読み込まれるのは、その隙間が立ち上がる場所だからです。
Baughan らは、この状態が実際には何なのかを調べるために独自の Twitter クライアントを作り、四十三人に使わせました。出てきた答えは依存ではありませんでした。正常範囲の解離です。自己への気づきと主体感の両方が落ちるほど深く没入している状態で、だから後から正直に報告すると、何を読んだか覚えていないという形になります。この研究の有用な半分は、設計の変更でそれが減ったことです。既読の表示、自分で作ったリスト、時間制限のダイアログ、使用統計。この状態は、前にいる人のものであると同時に、画面の側のものでもあります。
とはいえ責任が全部製品に行くわけではなく、全部行く版は行き止まりです。設計は誰かのために変わってはくれません。仕事は終わりを足し直すことです。自動再生を切るのは一つのスイッチで、この道でいちばん利回りの高い一分です。十一時の一回の決断を、一話ごとの決断に変換してくれるからです。終わりは始める前に決める。途中では決まりません。もう一回に手間を払わせる。ログアウトしてパスワードを要らせる、充電器を別の部屋に置く。
そして、スクロールがまったく楽しくないなら、平たくてどこか苦い感じなら、画面は理由ではなく道具で、ほかの三本のどれかがそれを弾いています。
夜更かしが問題ではない場合
ほかの何より大事な分岐が一つあって、しかも内側からは見落としやすい。
まともな時刻に布団に入ると必ず四十分横になったまま起きている、という状態なら、夜更かしは先延ばしではありません。機能しなくなった布団への合理的な反応で、見るべき対象は入眠のほうです。欧州の不眠症ガイドラインは診断が何を要求するかを定めていて、別の型であり別の治療です。入眠か睡眠維持の困難があり、日中の代償があり、それが数か月続いていること。Hill らの面接データにも入眠困難が主題の一つとして出てきていて、二つが仲良く同居することの確認になっています。それでも先に寝に行く側を片付ける価値はあります。毎回の試行が深夜一時から始まっていると、眠りが来るまでの長さは判定できません。
四本の道、一つの時刻。どれが自分のものかが問題になるのは、算数のためです。違う道に一か月使っても何も変わらず、しかも「違う道だった」という証拠は、「自分には規律がない」という証拠と見分けがつきません。
出典
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