夜中の三時について、いちばん役に立つ一文から始めます。そしてこれは、たいてい最初には言われません。
一晩に一度か二度浮上するのは、正常な睡眠です。 構造がそうできていて、多くの人がやっていて、その多くは何も覚えていません。
だから覚醒そのものは所見ではありません。所見はそのあとの二つです。睡眠が戻ってくるか。そして翌日が代償を払うか。
31.2%
週に3晩以上目が覚める人の割合、欧州5か国22,740人
7.7%
目が覚めたあと戻れない人の割合
77.5%
その少ない側で日中の支障を報告した割合
48.3%
寝酒を週1回以上する日本人男性の割合
この線引きは気を楽にするための言い方ではありません。疫学がそこに線を引いています。 モーリス・オハヨンが欧州5か国の22,740人を調べた研究では、夜間の覚醒は非常にありふれていて、覚醒後に戻れない状態はずっと稀でした。そして日中の支障を抱えていたのは後者のほうです。他の不眠症状を伴わない覚醒だけなら、日中の支障と結びつく可能性は低かった。
正常な一晩はどう組み立てられているか
深い睡眠は夜の前半に偏っています。だから後半は浅くなり、三時の浮上は記憶に残り、深夜零時の浮上は残りません。同じ回数起きていても、覚えているのは後半のほうです。
ここから先は、国内の公的文書がかなり踏み込んだことを書いています。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、脳波で厳密に測った夜間に実際に眠ることのできる時間を年齢別に示しています。
- 15歳: 8時間
- 25歳: 7時間
- 45歳: 6.5時間
- 65歳: 6時間
成人後は二十年ごとに三十分程度ずつ減っていきます。そしてここが肝心なところで、床上時間は逆方向に動きます。 同じガイドによれば、20代から30代では七時間程度だった床上時間が、45歳以上で徐々に増え、75歳では7.5時間を超える傾向がある。
眠れる量が減っているのに、床にいる時間が増えている。この差が、夜中に目を開けている時間として現れます。 加齢で中途覚醒が増えるのは多くの場合それだけのことで、ガイドも同じ趣旨をはっきり書いています。身体が必要とする以上に床の上で長く過ごすと、寝つきが悪くなり、途中で目が覚める回数が増え、熟眠感が減る。
先に一つ、これは睡眠習慣の話ではありません
四つの原因に入る前に、ひとつだけ記事ではなく医師のところにある組み合わせがあります。文末に隠すべきものではないので、先に書きます。
はっきり書く理由は規模です。ベンジャフィールドらの推計では、30歳から69歳の成人のうち9億3600万人が軽度以上の閉塞性睡眠時無呼吸を持っています。世界推計で日本の数字ではありませんが、桁を見れば十分です。米国睡眠医学会の診断ガイドラインは、疑いが出た時点で他の何よりも先に正式な睡眠検査を置いています。
そして睡眠ガイド2023も同じことを別の角度から書いています。閉塞性睡眠時無呼吸のような睡眠障害が潜んでいると、睡眠環境や生活習慣や嗜好品のとり方を改善しても睡眠休養感は十分に得られないかもしれない。 遮光カーテンはここには届きません。
気分の側も同じだけ率直に書きます。バリオーニらのメタ分析では、開始時点の不眠が追跡時点のうつ病の発生確率をおよそ二倍にしていて、統合オッズ比は2.60でした。冴えているのではなく重い早朝覚醒は、その現れ方の一つです。
身体:寝酒、アルデヒド、それと塩
四つのうち身体の経路は、いちばん検証しやすく、いちばん一貫して誤読されています。そして日本語で書くなら、誤読の中心は寝酒です。
金桂らの全国調査では、眠るために酒を飲むことが週1回以上ある人は男性で48.3%、女性で18.3%でした。英語圏の記事が nightcap を「習慣の一つ」として扱えるのは、この水準ではないからです。日本語では、寝酒は前提です。
- 男性: 48.3%
- 女性: 18.3%
仕組みは睡眠ガイド2023がそのまま書いています。アルコールは一時的に寝つきを促進し、睡眠前半では深い睡眠を増やす。しかし睡眠後半の質は顕著に悪化し、飲酒量が増えるにつれて中途覚醒の回数が増える。 エブラヒムらの総説も同じ形で、どの用量でも入眠までは短くなり、前半はまとまり、後半で分断が増えます。
つまり寝酒は効いています。四時間ほど効いて、そのあと請求書が、誰も夕食と結びつけない時刻に届きます。 寝つきの部分が成功しているので、結びつけようという気にならない。
ここに、英語の記事には書けない一段があります。睡眠ガイドは、アルコール分解にかかわるアルデヒド脱水素酵素の活性が低い人が、日本人を含むアジア人には西欧やアフリカ系より多いと書いています。活性が低い人は少量でも影響を強く受ける。だから「二杯までなら」という海外の目安は、そのまま輸入できません。 顔が赤くなりやすい人にとっての一杯は、同じ一杯ではない。
証拠が薄いところも書きます。2025年に Sleep Medicine Reviews に載った27件の統合分析では、レム睡眠に対する用量依存の影響は頑健で標準的な二杯程度から現れる一方、入眠後覚醒そのものへの統合効果は不確実という結果でした。機構のほうが数字より確かだ、ということです。それでも二週間やめて見る実験がこの経路で最も割のいい一手であるのは変わりません。文献に対してではなく、一人に対して答えが出るからです。
温度が二つめのてこです。睡眠は深部体温が下がることで支えられていて、岡本・水野の総説は、寝具を使う現実的な条件でも暑さが覚醒を増やし、徐波睡眠とレム睡眠の両方を減らすことを示しています。遅い時刻の重い食事、夜十時の強い運動、暖かすぎる寝室は同じ仕事をしています。沈むはずの身体を、小さい時刻まで暖かく忙しくしておく仕事です。
そして塩。ここは日本語でしか出てこない話で、睡眠ガイドがはっきり書いています。日中に摂った食塩の過剰分は睡眠中に排泄されるので、夜間の排尿回数が増える。 そして減塩を心がけることで夜間頻尿が軽減し、夜中に目覚める頻度が減ることが期待できる。夜間頻尿の対策として水分を減らす話は広く知られていますが、食塩を減らす話は同じくらい広くは知られていません。
向きの問題も一つ。ダフィーらは高齢者の夜間頻尿を検討して、逆方向の因果を書いています。何か別の理由で目が覚め、それから膀胱に気づいて、行く。 そのあと、行ったことが原因として記憶される。夜の残りが落ち着いたときに静かに消えるトイレは、最初から原因ではありませんでした。
頭:三時に自分と話し合うのが、いちばん悪い手
この経路の署名は時刻ではなく、順番です。目が覚めることと考えることのあいだに隙がありません。 ぼんやりした一瞬がない。明日が、完成した形で、最初の一秒に入っている。しかも午前三時が与える特有の鮮明さを帯びていて、それは朝九時には平凡に見えるものです。
それから計算が始まります。いま眠れば四時間十分。その計算のほうが、元の心配より害をなしています。 寝床を、締め切りのついた成績のようなものに変えてしまうからです。
午前三時に決まったことは、朝九時との接触に耐えません。
見えていないのは輪のほうです。起きていることを心配するのはそれ自体が覚醒を上げる行為で、覚醒はまさに起きている状態を続けさせるものです。 だから夜の後半は、元の問題ではなく起きているという事実についての時間に変わる。覚醒が次の覚醒を自分で作ります。
効く手は反直感的で、しかもガイドラインがついています。米国睡眠医学会の2021年の診療ガイドラインは、唯一の強い推奨を不眠症の認知行動療法に与え、そのうえで刺激制御法を単独の治療としても推奨しています。刺激制御法は、諦めているように感じる指示のほうです。
効く理由は地味です。寝床が確実に睡眠を予告するなら、睡眠が出てきます。 四百時間の問題解決をやってきた寝床は、問題解決を予告します。
リズム:三時に目が覚めて、しかも完全に冴えている
この経路は時刻ではなく覚醒の質で分かります。苦しくもなく、ぼんやりもしていない。ただ終わっている。起きて何かできるくらい冴えていて、それが毎晩ほぼ同じ早い時刻で、夜は周りよりずっと早く平らになる。
これは多くの場合、睡眠の位相が前に寄っています。身体が、暦より早く夜が始まって終わると決めている。だから十時に寝れば、四時は睡眠の中断ではなく睡眠の端です。米国睡眠医学会の概日リズム睡眠障害のガイドラインは、睡眠相前進障害を独立した対象として扱い、答えとして夕方の光を挙げています。不眠症に向けた手当てではありません。
そして睡眠ガイド2023は、日本語の読者に直接効く一文を書いています。加齢が進むと徐々に早寝早起きの傾向が強まり朝型化する。しかもこの傾向は特に男性で強い。 六十代で四時に目が覚めることを不眠と呼ぶ前に、位相が動いた可能性を置いたほうがいい。
ずれは週単位でも起きます。ウィットマンとローネベルクは、勤務日と休日の睡眠時刻の差を社会的ジェットラグと名づけました。金曜に二時間遅く、日曜に二時間長く眠れば、系は二回動く。飛行機に乗っていないだけです。
光はいちばん強いてこです。ライトらは八人を一週間、自然光だけの環境でキャンプさせ、体内時刻の指標が約二時間、睡眠時刻が約1.2時間早まったことを報告しました。八人は小さい研究で、引用され続けているのは効果の大きさのほうです。睡眠のために売られているどの製品も、七日で時計をそこまで動かしません。
この経路の反直感的な一手は、早く寝るのではなく遅く寝ることです。床上時間を、実際に存在する睡眠の量に合わせる。横になって待つ一時間を足すのをやめる。前に見た通り、睡眠ガイドが国内向けに書いている内容と一致します。
部屋:いちばん安く直って、いちばん飛ばされる
寝室は数か月住むと見えなくなります。給湯器は聞こえなくなり、カーテンの下の街灯の帯は見えなくなり、三時に寝返りを打つ相手は出来事として数えられなくなる。それでも全部登録されています。 音は意識に届かなくても深い睡眠から人を持ち上げます。
日本語で書くなら、部屋の話は温度から始めるべきです。気象庁の統計では、日最低気温25度以上の熱帯夜の年間日数が、13地点平均で100年あたり21日増えています。 統計期間は1929年から2025年。福岡は100年あたり53日、名古屋と京都は44日、横浜は38日。岡本・水野の総説が示した「暑さは覚醒を増やす」という所見は、年々あてはまる夜が増えている所見だということです。
それからスマートフォンで、青色光の話はこの件のいちばん退屈な部分です。本当の仕組みは、続きが手元にあることです。 そのまま眠りに落ちていたはずの十分間が、五十分のスクロールに変わる。手の届くところに中身の多いものがあるから、というだけの理由で。エクセルマンスらがベルギーの成人844人を調べた研究では、就寝前の携帯電話の使用が不眠得点の高さ、起床時刻の遅さ、疲労の強さを予測し、消灯後の使用が入眠潜時の長さと睡眠効率の悪さを予測していました。光の側の議論は画面と睡眠に書きました。本当ではありますが、摩擦の側より小さい。
ここでは意志より摩擦が勝ちます。部屋の反対側に置いた携帯は道徳的な立場ではありません。 判断が下手になっているその瞬間に、十二歩を挿入する装置です。
四つのどれが起こしているのか
| 経路 | 最初の十秒の手がかり | 何に反応するか |
|---|---|---|
| 身体 | 暑い、渇いている、心臓が動いている。食べたもの飲んだものと連動する | 最後の一杯を早める、部屋を涼しく、夕食を早く軽く、減塩 |
| 頭 | 何よりも先に、考えが完成した形でもう来ている | 二十分で寝床を出る。心配には明るいうちに枠を取る |
| リズム | 同じ早い時刻に完全に冴えている。夜九時にはもう平ら | 朝の光、起床時刻の固定、しばしば就寝を遅らせる |
| 部屋 | 決定的な手がかりがない。ホテルでは違う起き方をする | 暗く、涼しく、静かに。携帯は手の届かない場所へ |
ほとんどの人は一つではなく二つ持っています。厄介なのは、二つめのほうがすでに手を入れている側であることが多いという点です。それで手を入れても効かなかった理由の説明はだいたいこれで済みます。原因は寝具だと確信した人が寝具を買い替え続けているあいだ、動いていた仕組みは寝酒だった、という形です。
正しい経路を選べたかどうかの確認は安く済みます。その経路の入力を一つだけ変えて、他は動かさず、二週間見る。 三時が静かになれば、それでした。何も動かなければ、最初から二本目だったということで、それが分かるのに二週間は高くありません。
Sources
- 厚生労働省(2024)。健康づくりのための睡眠ガイド2023。
- 気象庁。気温の階級別日数の長期変化傾向。熱帯夜の年間日数、13地点平均で100年あたり21日増加。
- Kaneita, Y., et al. (2007). Use of alcohol and hypnotic medication as aids to sleep among the Japanese general population. Sleep Medicine, 8(7-8), 723-732.
- Ohayon, M. M. (2010). Nocturnal awakenings and difficulty resuming sleep: their burden in the European general population. Journal of Psychosomatic Research, 69(6), 565-571.
- Ebrahim, I. O., et al. (2013). Alcohol and sleep I: effects on normal sleep. Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 37(4), 539-549.
- Gardiner, C., et al. (2025). The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 80, 102030.
- Okamoto-Mizuno, K., Mizuno, K. (2012). Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. Journal of Physiological Anthropology, 31, 14.
- Duffy, J. F., et al. (2016). Age-related sleep disruption and reduction in the circadian rhythm of urine output: contribution to nocturia? Current Aging Science, 9(1), 34-43.
- Edinger, J. D., et al. (2021). Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine, 17(2), 255-262.
- Auger, R. R., et al. (2015). Clinical practice guideline for the treatment of intrinsic circadian rhythm sleep-wake disorders. Journal of Clinical Sleep Medicine, 11(10), 1199-1236.
- Wright, K. P. Jr, et al. (2013). Entrainment of the human circadian clock to the natural light-dark cycle. Current Biology, 23(16), 1554-1558.
- Wittmann, M., et al. (2006). Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiology International, 23(1-2), 497-509.
- Kapur, V. K., et al. (2017). Clinical practice guideline for diagnostic testing for adult obstructive sleep apnea. Journal of Clinical Sleep Medicine, 13(3), 479-504.
- Benjafield, A. V., et al. (2019). Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. The Lancet Respiratory Medicine, 7(8), 687-698.
- Exelmans, L., Van den Bulck, J. (2016). Bedtime mobile phone use and sleep in adults. Social Science & Medicine, 148, 93-101.
- Baglioni, C., et al. (2011). Insomnia as a predictor of depression: a meta-analytic evaluation of longitudinal epidemiological studies. Journal of Affective Disorders, 135(1-3), 10-19.
- 渡邊肇子、福水道郎、林雅晴(2018)。本邦で入手できるメラトニンサプリメントの品質評価。脳と発達, 50(5), 364-366。