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モラハラとしんどい関係

うまくいっていない関係、互いを損なう関係、支配のある関係。この三つは別のもので、分けることがこの項目の仕事です。

関係の科学

「しんどい関係」と呼ばれているものは、実際には三つの別のものです。うまくいっていない関係続けているだけで互いを損なう関係、そして支配のある関係。三つを分ける線は苦しさの強さではなく、一方がもう一方を管理しているかどうかです。

日本語でこの範囲を名指すときによく使われるモラハラ(モラルハラスメント)は、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌの造語の訳語で、診断名ではありません。 医学的な基準はなく、認定してくれる機関もない。いまは相性の悪さから支配まで全部に使われていて、だからこの項目は判定をしません。分けることだけをします。

ただ、うまくいっていない

お互いを大事に思っている二人が、何かの扱いに失敗している状態です。同じ喧嘩の繰り返し、しばらく続く不機嫌、子どもが生まれた年、身内を亡くした年、仕事が変わった年。

見分けの目安は三つあります。争点が具体的に名指せること。二人とも困っていること。そして、相手の言い分を侮蔑抜きで説明できること。うまくはいかなくても、揉めたあとの修復は起きています。

これは多くの関係が一度は通る状態で、普通のことで動きます。 一度まともに話す、負荷の元が軽くなる、専門家を一度挟む。ここに「モラハラ」という名前をつけるのは分類の誤りで、しかも事態を悪くします。解ける問題が、人格への判決に変わってしまうからです。

関係そのものが消耗させている

悪意がなくても、やり方のほうが腐っていることがあります。二人とも相手を壊そうとはしていないのに、一緒にいる時間が両方を悪くしている状態です。

目安として知られているのは、ジョン・ゴットマンが観察研究で離婚を予測した四つのふるまいです。この研究は英語圏の新婚カップルを追ったもので、そのまま日本の家庭の基準になるわけではありませんが、型としては通じます。

  • 批判 —— 行動ではなく人格を責める。「いつも」「絶対に」
  • 侮蔑 —— 見下し、鼻で笑う、目をそらす。データ上いちばん強い予測因子で、受ける側をいちばん削る
  • 自己弁護 —— 苦情に苦情で返し、受け取る部分をひとつも作らない
  • 逃避 —— 途中でやりとりから降りる。日本の相談現場では無視・黙殺として語られることが多い

実際の相談で繰り返し出てくる目安を三つ足します。この関係にいるときの自分が、自分の悪い版であること。友人に何があったかを話さなくなっていること。そして、穏やかな時期が幸せではなく安堵として感じられること。

この段階は修復できることがあります。ただし二人ともそれを望んでいる必要があり、たいていは部屋に第三者が要ります。 片方が努力の量を増やしても、ここは動きません。セックスレスのように見えている問題が、実はここにあることもあります。

支配があるとき —— モラハラとDV

線は支配の型があるかどうかで、これは喧嘩の延長ではありません。エヴァン・スタークはこれを強制的支配(coercive control)と呼び、マイケル・ジョンソンは状況的な夫婦間暴力と類型として分けています。必要な対応が違うから分けられています。

出てくる形:

  • 携帯、居場所、連絡先、支出の監視
  • 友人と家族からの切り離し。多くは徐々にで、「大事にしている」という形をとる
  • 金銭の管理 —— 生活費を渡さない、働くことを許さない
  • 脅し。自分を傷つける、子どもやペットに向ける、実家に言うと告げるものを含む
  • 身体的な暴力。あとから事故だった、あれ一回だけだと説明されるものを含む
  • 自分の記憶のほうを疑わせる
  • 性的な強要。2023年の刑法改正で不同意性交等罪となり、配偶者間でも成立することが条文上はっきりしました

ここは前の段落と同じ答えを持ちません。 強制的支配がある関係に夫婦カウンセリングは推奨されておらず、複数の機関が明確に避けるよう述べています。話した内容が、そのまま材料として使われうるからです。

日本の制度はこの数年で動きました。2024年4月施行の改正配偶者暴力防止法で、保護命令の対象に精神的な暴力による脅迫が加わり、接近禁止命令の期間は6か月から1年になりました。身体的な暴力がなくても対象になりうる、という点が変わっています。離婚の場面では、モラハラ単独では民法770条の法定離婚事由に明示されておらず、実務上は「婚姻を継続し難い重大な事由」として、記録の積み重ねで主張されます。

心当たりがあるなら、DV相談+ 0120-279-889(24時間)。配偶者暴力相談支援センターの全国線で、これがDVに当たるのかわからない段階の電話を受け付けています。 何を相談したいのか自分でも決まっていない段階なら、よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)のほうが向いています。住所を知られたくない事情がある場合は、住民票と戸籍の附票に閲覧制限をかける支援措置の相談も、同じ窓口からできます。

最後に、多くの記事が省くけれど計画の形を変えるものを一つ。離れる時期がいちばん危険です。 危険性の研究はここで一致しています。支配のある関係から離れる準備は、一人でではなく、専門の窓口と一緒に進めるべきものです。

どれなのかを分ける問い

どれくらいつらいか、ではありません。効くのはこちらです。

二人で問題を解こうとしているのか、一方がもう一方を管理しているのか。

うまくいっていない関係では、二人が問題の同じ側にいて負けています。消耗する関係では、反対側にいて両方が悪くなっています。支配のある関係では、一方のふるまいが相手を管理することを軸に組み立てられていて、これは別の状況で、別の助けが要ります。

自分の揉め方の型を先に見ておきたい場合は、揉め方の型がその材料になります。ただしどのテストも、家庭で起きていることを判定できません。 上の三つ目に心当たりがあるなら、テストより窓口のほうがずっと役に立ちます。

もう一つ。人に「モラハラ」という札を貼ることについて。この語は、正確である回数よりはるかに多く使われていて、その多くは負荷のかかった状況でふるまいを誤っている人に向けられています。関係が有害になることはあります。人にその札を貼ると、何かが変わりうるかという問いのほうが閉じます。 それが正しい結論であることもありますが、そこから始めるのではなく、そこに辿り着くほうの順番です。原家族の側の話であれば、毒親が扱っているのはそちらです。

出典

  • · Gottman, J. M., Levenson, R. W. (1992). Marital processes predictive of later dissolution. Journal of Personality and Social Psychology.
  • · Stark, E. (2007). Coercive Control: How Men Entrap Women in Personal Life.
  • · Campbell, J. C., et al. (2003). Risk factors for femicide in abusive relationships. American Journal of Public Health.
  • · Johnson, M. P. (2008). A Typology of Domestic Violence.
  • · Hirigoyen, M.-F. (1998). Le harcèlement moral(邦訳『モラル・ハラスメント』)— この語の出典。

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