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毒親

どこからが毒親なのか、大人になってから何が残るのか、そして「縁を切る」が法的に何を意味するのか。

関係の科学

毒親という言葉は、スーザン・フォワードの『毒になる親』(原題 Toxic Parents)の邦訳から広まったもので、診断名ではありません。 医学的な基準もなければ、該当すると認定してくれる機関もない。

だからこの項目は、あなたの親が毒親かどうかを判定しません。判定は、この語で検索している人が本当に必要としているものではないことが多いからです。多くの場合、必要なのは「自分がおかしいわけではない」という確認と、これからどうするかの材料です。

先に一つ書いておきます。親を悪く思うことに、許可は要りません。 育ててもらったことと、傷つけられたことは、同時に成立します。

よく挙がるパターン

以下は判定基準ではなく、相談の場で繰り返し出てくる型です。いくつ当てはまるかを数える意味はありません。 自分の経験に名前がつくかどうかだけ見てください。

支配 —— 進路、就職、交際、結婚を親が決める。反対されたのではなく、選ばせてもらえなかった。

否定 —— 何を達成しても足りない。褒める代わりに次の課題が来る。「あなたのため」がついてくる。

役割の逆転 —— 子どものほうが親の感情を管理していた。親の機嫌をうかがい、慰め、夫婦の不和の相談相手にされた。心理学では親化(ペアレンティフィケーション)と呼ばれます。

条件つきの承認 —— 期待に応えているあいだだけ愛される。外れると態度が変わる。

きょうだい間の差 —— 露骨な優劣がつけられ、それが家族の中で当たり前として扱われてきた。

罪悪感の運用 —— 「誰のおかげで」「産まなければよかった」。感情が要求の手段として使われる。

境界の侵入 —— 部屋、手紙、スマホ、交友関係。成人後も続くことがあります。

そして、身体的・性的な暴力があった場合は、この項目の枠を超えます。 その場合は下の窓口を先に見てください。

大人になってから残るもの

毒親という語で検索する人の多くは、すでに親元を離れています。それでも検索するのは、離れても続いているものがあるからです。

[愛着](/base/earned-secure-attachment)の型。 幼少期の関係は、大人になってからの近しい関係の初期設定になります。近づかれると逃げたくなる、見捨てられる予感が強く出る、相手の機嫌に過剰に反応する —— どれも性格の欠点ではなく、学習された反応です。

過剰な察知。 親の機嫌を読んで生き延びた人は、他人の感情の変化に異様に速く気づきます。役に立つ能力であり、同時に消耗の原因でもあります。

自分の必要が言えない。 必要を言うと責められた経験があると、必要を持つこと自体が申し訳なくなります。何が必要かを伝えるの項が扱っているのはここです。

健康への影響。 ACE研究(逆境的小児期体験)は、子ども時代の逆境の数と、成人後の心身の健康リスクとの関連を大規模に示しました。これは運命の宣告ではありません —— 相関であり、その後の関係や支援によって経路は変わります。

ここが大事なところです。変わらないと決まっているものは、ほとんどありません。 愛着の型は、後からの安定した関係や適切な治療で動くことが確認されています(獲得された安定型)。

「縁を切る」の法的な実際

日本語圏で最も誤解が多く、そして最も実務的に効くのがここです。

日本の法律に、親子関係を解消する手続きはありません。 成人が自分の意思で戸籍から親を消すことはできず、絶縁届のようなものも存在しません(例外は特別養子縁組が成立する場合のみで、これは事実上使えません)。

その前提で、実際にできることがあります。

扶養義務の範囲を知っておく。 民法877条により、直系血族には扶養義務があります。ただし成人した子が親を扶養する義務は「生活扶助義務」とされ、これは自分の生活を保持したうえで余力がある範囲で足りる、というのが通説です。自分の生活を切り詰めてまで負う義務ではありません。実際に請求されても、家庭裁判所が資力を見て判断します。

住民票・戸籍の附票に閲覧制限をかける。 DVやストーカー、虐待の被害がある場合、自治体に申し出て住所の閲覧を制限できます(支援措置)。居場所を知られたくない場合、これが最も直接的な手段です。

相続放棄。 親の借金を引き継がないためには、相続の開始を知ってから3か月以内の手続きが必要です。期限が短いので、心当たりがあるなら先に知っておく価値があります。

接触の遮断そのものは自由です。 連絡を絶つこと、住所を知らせないこと、会わないことに、法的な制限はありません。

そして、距離を取ることは「全か無か」ではありません。 完全に切る人もいれば、年に一度だけ会う、連絡は文字だけ、実家には泊まらない、といった形で落ち着く人も多い。どこまで下げるかを自分で決められる、という感覚のほうが、実際には効きます。

相談できるところ

一人で判断しなくていい種類の問題です。

よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)。何を相談していいか決まっていない段階でもかけられます。

いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)。死にたい気持ちがあるときに限りません。

精神保健福祉センター —— 各都道府県に設置。家族関係の相談を受け付けており、必要なら医療機関につないでくれます。

児童相談所虐待対応ダイヤル 189(いちはやく)。18歳未満の場合、または18歳未満の子について心配がある場合は、まずここです。

配偶者暴力相談支援センター / DV相談+ 0120-279-889 —— 身体的な暴力や、住所を知られたくない事情がある場合。支援措置の相談もここからできます。

どれも「これは相談していいことなのか」がわからない段階の電話を受け付けています。 判断してから連絡する必要はありません。

最後に。この項目は診断ではありません。 そして、私たちは治療の提供者ではなく、ここにある診断テストのどれも、家族の中で起きたことを判定できるものではありません。何が起きていたのかを整理したい段階なら、上の窓口のほうがずっと役に立ちます。

出典

  • · Forward, S. (1989). Toxic Parents(邦訳『毒になる親』)— この語の出典。
  • · Felitti, V. J., et al. (1998). Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. American Journal of Preventive Medicine.
  • · Bowlby, J. (1969/1982). Attachment and Loss.
  • · 民法877条(直系血族および兄弟姉妹の扶養義務)、および扶養義務の程度に関する通説(生活扶助義務)。

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