ポリフィデリティ
三人以上の閉じたグループで、集団として排他的な形。非一夫一妻でありながら、外には開いていない関係のこと。
関係の科学
ポリフィデリティとは、三人以上が互いに関係を持ち、そのグループの外には開いていない形のことです。poly(複数)と fidelity(貞節)の合成で、語がそのまま中身を言っています。
日本語圏でこの語が使われることはほとんどありません。実際には「閉じたポリアモリー」と説明されることが多く、語を知らないまま、その形で暮らしている人のほうが多いという状態です。
この形が示しているのは、複数であることと、誠実であることは別の軸だということです。ポリフィデリティのグループは二人より多いという意味で非一夫一妻で、しかも完全に排他的。中にいる誰も、外の誰に対しても開いていません。
近い言葉との違い
この項目の主な仕事はここです。四つの語が混ざって使われていますが、指しているものは違います。
- ポリアモリー —— 複数の恋愛関係を持つこと。新しい関係に開いている場合も閉じている場合もあり、ポリフィデリティは[ポリアモリー](/base/polyamory)の閉じているほうの場合です。
- オープンな関係 —— 二人のカップルが性的に排他的でない形。ポリフィデリティは同じ軸の反対側で、排他的、ただし境界の内側に三人以上いる。
- 三人婚 —— 三人の場合。閉じていればポリフィデリティで、開いている三人の関係もあり、そちらは違います。
- 合意のある非一夫一妻(ENM) —— 全部を含む傘で、上の三つはその下にあります。
一つの見方として覚えておくと通りがよくなります。一夫一妻は二人の周りに線を引きます。ポリフィデリティは同じ種類の線を三人以上の周りに引きます。線が緩いのではなく、囲みが大きいだけです。
なぜ閉じるのか
挙げられる理由は、一夫一妻を選ぶ理由とほとんど同じです。そこがこの形のおもしろいところでもあります。
予測できること。 閉じたグループでは「この先、誰か来るのか」という問いが常設ではなくなります。愛着の型が不安寄りの人にとって、この問いを開けたままにしておくのは高くつきます。閉じる合意は、それに繰り返し答えるのではなく、一度で答える形です。
時間。 どの非一夫一妻の形でも、いちばん先に足りなくなるのは時間です。三、四人というのは、多くの人が実際に関係を保てる上限で、閉じるのは制限というより、その上限を認める行為に近い。
生活の単位。 住居、家計、子どもの世話は、大人の顔ぶれが固定しているほうが組みやすい。共同で子どもを育てているグループが閉じた形に寄っていくのは、この理由です。
性感染症の取り決め。 閉じたグループは、検査と保護具について外に開いた形とは別の合意を結べます。日本ではHIV検査を全国の保健所で匿名・無料で受けられ、自治体によっては梅毒なども同時に扱っています。合意の内容より、検査を定期的に受け続けることのほうが実効があります。
閉じることに固有の難しさ
閉じるのは決めることであって、そうなっていくことではありません。 ポリアモリーから始まったグループが、名指さないまま閉じた状態に移っていることがあります。そのときに起きるのは、後から「そんな約束をした覚えがない」という食い違いです。合意は更新されたときに言葉にしないと、合意ではなく習慣になります。
人が増えると構造ごと変わります。 閉じた三人に四人目が入るのは、カップルが一人を迎えるのとは違い、全員での結び直しです。既存の人たちの乗り気の度合いが揃っていないほうが普通で、そこを揃える作業が先に来ます。
外からは見えません。 閉じた三人以上のグループは、外から見ると二人組に誰かが加わっているように見えます。職場でも親族でも、説明するか、しないで済ませるかを毎回決めることになり、その手間は関係そのものの難しさとは別に、常時かかり続けます。 閉じていること自体は外から確認できないので、説明しないほうを選んだ場合、周囲の理解は「開いた関係」のほうに寄ります。
終わり方が別れより複雑です。 グループの中の一つの関係が終わっても、他が自動的に終わるわけではありません。より小さい閉じたグループになるのか、開くのか、解散するのか。前例が少なく、実践者の記録でいちばん難所として挙げられるのがここです。
そして日本では、閉じていることが法的な保護に一切つながりません。 婚姻が二人のものであるだけでなく、事実婚(内縁)も判例上は二人の間にしか成立しないとされています。つまり婚姻の外側の受け皿も二人用にできている。排他性は、法の側からは見えていません。具体的な備え —— 公正証書遺言、任意後見、受取人の指定 —— は三人婚の項に書いてあります。
出典
- · Sheff, E. (2013). The Polyamorists Next Door.
- · Rubin, J. D., et al. (2014). On the margins: considering diversity among consensually non-monogamous relationships.
- · Conley, T. D., et al. (2017). Investigation of Consensually Nonmonogamous Relationships. Perspectives on Psychological Science.