上司との関係は、対等な二者関係ではありません。評価と配分の権限が片側にあり、こちらには相手を選ぶ自由がない。だから普通の人間関係の助言 —— 話し合う、距離を取る、期待しない —— が、そのままでは効きません。効くのは、相手を変えずに、渡し方の形式を変えることのほうです。それは思っているより安く済みます。
先に、三つに分ける
この分け方を飛ばすと、全部が自分の我慢の話になります。
(1) 相性。 速度、粒度、口頭か文書か、報告の頻度。これは伝え方の型の差で、形式を変えるだけで大きく減ります。ここに当たるものを我慢の問題として扱うと、効く手を打たないまま消耗します。
(2) 業務設計の不備。 指示が二転三転する、必要な情報が回ってこない、決裁が止まる。これは性格ではなく仕事の組み方の問題で、記録を取って上位か人事に上げる筋のものです。上げることは告発ではなく、業務改善の提起として立てられます。
(3) ハラスメント。 厚労省の令和5年度の実態調査では、過去三年にパワハラを受けたと答えた労働者は19.3%でした。ここに当たる場合、相性の話として自分の受け止め方を直そうとするのは、最も高くつく誤りです。 日時と発言と、その場にいた人を記録することが最初の行動になります。相談窓口は社内だけではなく、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーがあります。
種類ごとの、実際に効く一手
決められない人。 選択肢を二つに絞り、推奨と期限を添えて送る。「ご意向を伺えれば」ではなく「金曜までに返答がなければ A で進めます」。決められない人が苦手なのは決めることで、承認することではありません。
手柄を持っていく人。 成果の共有先を上司一人にしない。関係者を含む形で経過を残す。糾弾ではなく、単に記録の宛先を増やす。
爆発する人。 その場で議論しない。内容の検討は熱が引いてからにする。熱の最中に出た指示は、後で書面にして確認する。これは受け身ではなく、記録を残す動作です。
いなくなる人。 意思決定を待つのをやめ、既定の進め方を先に宣言する。不在の管理職の下で消耗するのは、判断待ちの時間であって、判断の内容ではありません。
何によって変わるか
DISCが役に立つのは、自分と上司を同じ四つの軸に載せられるからです。差が見えると、「なぜ私にだけ厳しいのか」という問いが、「この人は結論から入る人で、自分は経緯から話す人だ」という扱える形になります。
同時に、これは万能ではありません。型の差で説明できるのは、「合わない上司」と呼ばれるもののうち半分くらいです。 残りの半分は、業務設計かハラスメントで、そこに心理学の語彙を当てるのは、問題の名前を間違えることになります。自分の側の限界の引き方については線引きの項を参照してください。