遠距離恋愛
続かないと言われがちですが、研究の結果はもっと複雑です。本当に効くもの、そして別れが集中する意外な時期。
関係の科学
遠距離恋愛は続かない、とよく言われます。研究の結果はもう少し複雑で、そして最初に知っておく価値があるのはこの一点です —— 満足度・親密さ・関係への信頼を測ると、遠距離のカップルは近距離のカップルと大きく変わりません。
日本で遠距離が始まるきっかけは、進学や就職に加えて転勤が大きい。ここは英語圏と事情が違うところで、扱いも変わります。自分たちで決めた別居ではなく、決められた別居だからです。終わりの時期が読めず、延長もありうる。「あと一年半」と言えるかどうかが、後で効いてきます。
研究がわかっていること
距離そのものは、関係の質をあまり予測しません。 複数の研究が、遠距離と近距離で満足度に大きな差がないことを繰り返し確認しています。うまくいかない遠距離が目立つのは、遠距離だからではなく、元々うまくいかない要素があったからということが多い。
連絡は量より深さ。 ジャンとハンコックの研究が示したのは、離れているカップルのほうが自己開示の度合いが高く、相手を理想化しやすいということでした。会えない分、伝えることを選ぶ。結果として会話の中身が濃くなります。
終わりが見えているかどうかが効く。 これが最も一貫している所見です。いつ同じ場所に住めるのか、その見通しを共有できているカップルは続きやすい。逆に「いつかは」で止まっているほど揺らぎます。転勤による遠距離が難しいのはここで、見通しが本人の手にないためです。
この状態がつらいかどうかは[愛着スタイル](/base/earned-secure-attachment)で大きく変わります。 不安型の人は連絡の間隔に強く反応し、回避型の人は距離を安定と感じることがあります。同じ状況が、二人にとって同じ意味を持っていない場合がある、ということです。
別れが集中するのは、離れているあいだではない
スタフォードとメローラの研究で有名になった所見です。遠距離のカップルが最も別れるのは、離れているあいだではなく、同じ場所に移り住んだあとでした。追跡した中で、再会後の数か月に別れが集中しています。
理由は理想化です。離れているあいだ、人は相手の好ましい面を中心に相手像を作ります。悪意ではなく、材料が足りないからそうなる。機嫌の悪い朝も、家事のやり方も、疲れているときの態度も見えていない。再会は、その差分が一度に届く出来事です。
だから遠距離を乗り切ったこと自体は、ゴールではありません。多くのカップルにとって、本当の移行はそこから始まります。
対策として実際に効くのは、離れているあいだに都合の悪いところも見せておくことです。うまくいっている報告だけを持ち寄る関係ほど、再会後の落差が大きくなります。
離れているあいだに効くこと
連絡の「型」を決めない。 毎日この時間に、と決めると、続いているうちは安心ですが、守れなかった日が事件になります。頻度そのものは満足度をあまり予測しません。
予定の話より、細かい話を。 「今日何してた」より「今日これがちょっと嫌だった」のほうが関係を保ちます。近況報告は情報で、自己開示は接続です。
次に会う日を、常に一つ決めておく。 これは実務的に効きます。日付が決まっていない期間が長いほど、関係が抽象的になります。
揉めたことをメッセージで終わらせない。 文字は感情の抑揚が落ちるので、遠距離の衝突は誤読で拡大しやすい。声か顔が使えるところまで持ち越すほうが、たいていうまくいきます。
そして、期限の話を避けない。 いつまでこの形なのか、どちらが動くのか、動けないならどうするのか。この会話は先延ばしにされがちですが、研究が最も強く支持しているのが、まさにこの見通しの共有です。答えが出なくても、話したことがあるかどうかで違います。
出典
- · Stafford, L., Merolla, A. J. (2007). Idealization, reunions, and stability in long-distance dating relationships. Journal of Social and Personal Relationships.
- · Jiang, L. C., Hancock, J. T. (2013). Absence Makes the Communication Grow Fonder. Journal of Communication.
- · Kelmer, G., et al. (2013). Relationship quality and commitment in long-distance relationships. Family Process.