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エニアグラム(9つの性格)

九つのタイプ、研究ではなく霊的な教えを出自とする系譜、そして日本語圏だけが背負っている「すでに科学的に検証された」という誤解。

性格の科学

エニアグラムは人を九つのタイプに分ける枠組みで、分け方の軸が他と違います。何をするかではなく、何を避けようとしているかでタイプが定義されています —— タイプ2の「必要とされないことへの怖れ」、タイプ5の「消耗させられることへの怖れ」、タイプ9の「自分の中に対立が起きることへの怖れ」。九つのまわりにはウイング(隣接するタイプのうち寄っているほう)と矢印(ストレス下と成長時に移動する先を示す線)が置かれます。

他の枠組みとは本当に種類の違う地図で、そして他のどれよりも本当に証拠が薄い。この二つは両方とも本当で、この項目はその両方についてです。数十年の因子分析から出てきたビッグファイブと比べても、五十年分の信頼性研究を持つ質問紙がある MBTI と比べても、エニアグラムの位置は特殊です。検証される前に教えられ、そして大部分はいまだに検証されていません。 私たちがエニアグラム診断を置いているのは、読者が求めるからであり、この枠組みが立てている問いが良い問いだからです。それは多くのエニアグラムのページが掲げている主張よりも、ずっと小さな主張です。

九つはどこから来たのか

データからではありません。系譜はそれなりによく記録されていて、霊的な教えの中を通っています。

九つの点を持つ図形そのもの —— 円の中に三角形と不規則な六角形が入ったあの図 —— を西洋に持ち込んだのは二十世紀初めの G・I・グルジエフで、そこにパーソナリティのタイプは一切付いていませんでした。過程を表す象徴です。1960年代にオスカー・イチャーソが、チリでのちにアリカ学派と呼ばれる場で教える中で、九つの点を、古典的な七つの大罪を含む複数の源から引いた自我の固着と情念に結びつけました。イチャーソに学んだチリの精神科医クラウディオ・ナランホが1970年代初めにこの体系をカリフォルニアに持ち込み、小さな口伝のグループで教えます。現代の記述が臨床的に聞こえるのは、このとき精神医学の語彙が足されたからです。そこからイエズス会の黙想の家、自己啓発の市場、企業研修へ。ドン・リソとラス・ハドソンの一連の本が、いま多くのサイトが使っている名前と、最もよく知られた質問紙 RHETI を生んでいます。

この歴史は失格の理由にはなりません。有用な心理学の着想が臨床の直観から始まった例はいくらでもあります。ただし、九つのタイプが先に指定され、そのあとで探されたことは意味します。特性モデルとは順序が逆で、次の節の結果のほとんどはこの順序から説明がつきます。

日本にはどう入ってきたか

日本語圏の経路はアメリカのそれより短く、ほぼ一冊の本と一つの団体を通っています。ここを知らないと、日本語のエニアグラムのページが揃って持っている手触りが説明できません。

紹介したのは鈴木秀子で、1980年代後半のことです。1989年に日本エニアグラム学会が設立され、1997年に PHP研究所から出た『9つの性格 —— エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係』が版を重ねました。学会の関係者が自社の社員研修に持ち込む形で、企業の側にも入っています。

ここで日本語圏固有のずれが生まれました。日本語のエニアグラムは「人間学」という語と一緒に流通していて、しばしば「世界各国で科学的に検証されている」という趣旨の紹介文を伴います。 版元の商品説明にもその文言が入っています。英語圏の読者が持っている誤解は「スピリチュアル寄りだけどよく当たる」で、日本語圏の読者が持っているのは「すでに検証を終えた学問」です。次の節が反証しているのは、後者のほうです。

近年はもう一つ別の入口があります。SNS の16タイプ文化の隣から入ってくる若い層で、この人たちは鈴木秀子の本も学会も通っていません。同じ語を使いながら、二つの層はまったく違う出所から来ています。 前者はまず「検証済み」を、後者はまず「診断結果が自分そのもの」を疑うところから始めるほうがよい。

研究が見つけたこと

フックらが2021年に Journal of Clinical Psychology に発表した系統的レビューは、104の独立した標本を対象にしています。入手できる要約として最も公平で、言っていることはおおよそ四つです。

質問紙の内的一貫性はある。 標準的な器具の得点はそれなりにまとまっていて、短い間隔なら安定もしています。いちばん低いハードルで、エニアグラムはこれを越えます。ニュージェントらが2004年に RHETI について出した結論も同じで、内的一貫性は許容範囲、構成概念妥当性の支持は混在。

下位尺度は理論の予測する方向で他の測度と関連する。 エニアグラムのタイプはビッグファイブの特性と、だいたい納得のいくパターンで相関します —— タイプ1と誠実性、タイプ4と神経症傾向・開放性、タイプ7と外向性。記述が何かを拾っている実在の証拠です。

しかし因子分析は九つの因子を復元しません。 たいていそれより少ない数が出ます。そして大きな標本で人が実際に九つの群に分かれることを示した研究はありません。次元ではなくタイプであることを確立する作業は、まだ行われていない。 連続体の上に型を載せているという点では、四文字コードの抱えている問題と同じ形です。

周辺の機構はほぼ無裏づけです。 ウイング、矢印、発達段階、統合と分裂の経路 —— エニアグラムを一覧表ではなく動的な体系に見せている部分には、経験的な仕事がほとんど何もありません。そして、ネット上でいちばん自信たっぷりに増築されているのは、まさにこの部分です。

いちばん面白い反対側の重りはサットンら(2013)で、働いている成人416人にエニアグラムとビッグファイブ特性、価値観、潜在的動機を一緒に取らせたところ、九つのタイプは三つすべての独特な組み合わせによって区別されました。探索的研究一本は基盤ではありません。ファイルを閉じない理由です。

この枠組みが立てている問い

エニアグラムを擁護する論はここにあって、九つのタイプが実在の区分であることには依存しません。

特性モデルが測っているのは何をするかです。外向性は人と話す頻度を数え、誠実性は書類が出たかどうかを数えます。行動は観察でき、数えられるからこそ、あのモデルには今ある証拠があります。同時にこれは具体的な死角でもあって、二人が同じことを、正反対の理由でやっていることがある。

エニアグラムは、広く使われている枠組みのうちきわめて珍しい、なぜを軸に組まれたものです。単位は行動ではなく動機で、たいていは回避です。タイプ3の達成とタイプ1の達成は、誠実性の尺度の上では同じに見えて、内側からはまったく似ていません。片方は勝たなければ無価値だという怖れの上で走り、もう片方は間違っているという怖れの上で走っている。この区別はビッグファイブのプロフィールには現れません。 その九つが正しい九つなのかは確立されていない部分ですが、自分の人生を「これを避けるため」に組んでいる何かに名前をつけてみてくださいという問いは良い問いで、特性モデルが根づかなかったカウンセリングの現場でエニアグラムが生き残っている理由もそこにあります。

もう一つ、あまり名誉でないほうの理由。タイプの記述は長く、密度が高く、二人称で書かれていて、これはバーナム効果にとって異常に肥沃な土壌です。欠点とその救済を両方含んだ記述は、ほとんど誰にでも当たっていると感じられます。タイプ説明を読んで「これだ」という衝撃が来たなら、その衝撃はあなたについてのデータであると同時に、その文章の書き方についてのデータです。

それでも使うなら

エニアグラム診断を受けるなら —— タイプ名にはリソ=ハドソンの名称を使っていますが、これは出版上の慣習であって研究上の知見ではありません —— 結果を平均よりましなものにする方法が三つあります。

一位だけでなく、二位三位の記述も読む。 質問紙はノイズが多く、タイプ同士もきれいには分離しません。僅差の一位は、判定の顔をした同点です。この枠組みを真面目に使っている人の多くは、最終的に得点ではなく読み比べで自分のタイプを決めています。因子構造が確認されていない器具への応答としては、それは筋が通っています。

中心的な怖れは真に受け、周辺の機構は軽く扱う。 自分のタイプが何を避けようとしているかを書いた一文は、いくらか裏づけのある部分で、居心地の悪い一時間を使う価値のある部分です。ウイングと矢印と発達段階は、裏づけの無い部分です。

他人に使わない。 どの枠組みでも部屋の向こうの同僚をタイプ判定するのは失敗の形ですが、この枠組みでは単位が隠れた動機である分だけ悪質になります。人の中心的な怖れは見えません。 勝手に一つ割り当て、その人の行動をそこから解釈し始めると、閉じた環になります。

比べられて時間を追える測定がほしいなら、使うべきはビッグファイブです。自分がずっと守り続けている何かに与える言葉がほしいなら、この枠組みは証拠の厚いどの枠組みよりも良い言葉を持っています。二つの文を両方とも正しいまま持つ方法は、それが別の問いへの答えだと気づくことです。 そして関係の中で毎回同じ役に入ってしまう理由を知りたいだけなら、愛着理論のほうが説明が整っています。

出典

  • · Hook, J. N., Hall, T. W., Davis, D. E., Van Tongeren, D. R., Conner, M. (2021). The Enneagram: A systematic review of the literature and directions for future research. Journal of Clinical Psychology, 77(4), 865–883.
  • · Newgent, R. A., Parr, P. E., Newman, I., Higgins, K. K. (2004). The Riso-Hudson Enneagram Type Indicator: Estimates of reliability and validity. Measurement and Evaluation in Counseling and Development, 36(4), 226–237.
  • · Sutton, A., Allinson, C., Williams, H. (2013). Personality type and work-related outcomes: An exploratory application of the Enneagram model. European Management Journal, 31(3), 234–249.
  • · Naranjo, C. (1994). Character and Neurosis: An Integrative View. Gateways/IDHHB.
  • · Riso, D. R., Hudson, R. (1999). The Wisdom of the Enneagram. Bantam Books.
  • · 鈴木秀子 (1997). 9つの性格 —— エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係. PHP研究所.

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