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同棲

住み始めたことが、その後を良くする場合と悪くする場合。分けているのは期間ではなく、決めたかどうかです。

関係の科学

ここで言う同棲は、婚姻届を出さずに一緒に住んでいる状態を指します。日本ではもう一つ事実婚という言葉があり、混同されがちですが別物です。同棲は生活の実態の話、事実婚は婚姻の意思があることを前提にした法的な位置づけの話です。

一緒に住むこと自体は、その後を良くも悪くもしません。効いているのは別のところにあります。

「同棲すると別れやすい」は、正確ではない

かつて欧米の研究で、結婚前に同棲した夫婦のほうが離婚しやすいという所見が繰り返し報告され、これが同棲効果と呼ばれていました。

その後の研究で、この効果はほぼ説明がついています。

年齢の交絡。 クーパーバーグの分析では、離婚率に効いていたのは同棲そのものではなく、一緒に住み始めた年齢でした。若いうちに同居を始めた人ほど後の離婚が多く、年齢をそろえると同棲の効果はほとんど消えます。

時代による変化。 同棲が珍しかった時代には、同棲を選ぶ人自体が特殊でした。一般化するにつれ、この選択バイアスは薄れています。

つまり「同棲するとダメになる」という言い方は、根拠として弱い。ただし同棲の仕方によって差が出るという部分は、いまも残っています。

滑り込みと、決断

スタンリーらが提示した枠組みで、この項目で最も使える考え方です。

滑り込み —— 泊まる回数が増えて、荷物が増えて、気づいたら住んでいた。誰も決めていない。

決断 —— 一緒に住むかどうかを話し、理由を確認し、決めた。

同じ「同棲中」でも、この二つは後の経過が違います。理由は慣性です。一緒に住むと、家賃、家具、契約、共通の友人、ペットといった制約が積み上がる。すると関係を続ける理由と、離れにくい理由の区別がつかなくなります。

決めて住み始めた人はこの罠に入りにくい。なぜ一緒にいるのかを一度言語化しているので、後から確認し直せるからです。

日本では、同棲が結婚の前段階として自動的に扱われることも多く、これも一種の滑り込みです。「そのうち結婚するだろう」を二人が別々に思っているだけ、という状態が長く続くことがあります。

法的な位置づけ

ここは誤解が多いところです。日本の法律に「内縁の妻/夫」の自動的な権利を、同棲だけで与える仕組みはありません。

同棲しているだけの場合:

  • 相続権はありません。 何年一緒に住んでいても、遺言がなければ相手には何も渡りません。
  • 医療の場面で家族として扱われる保証がありません。 手術の同意や重篤時の面会は、病院の運用次第です。
  • 共同の財産という扱いになりません。 二人で貯めたお金でも、名義のある側のものとして扱われるのが原則です。
  • 別れるときの取り決めがありません。 婚姻の解消と違い、財産分与の枠組みがそのままは使えません。

これらの一部は事実婚として扱われることで変わります。同棲と事実婚を分けて理解しておく価値があるのは、主にこの点のためです。

同棲の段階でもできる備えはあります。遺言、任意後見、医療に関する意思表示、生命保険の受取人指定。どれも婚姻ほど強くはありませんが、何もないよりはるかにましです。

住む前にしておく会話

メリットとデメリットを並べるより、この四つを話したかどうかのほうが効きます。

なぜ住むのか。 家賃が浮くから、会う時間が増えるから、結婚の前段階として —— どれでもいいのですが、二人の答えが違っていないかは確認する価値があります。

お金をどう分けるか。 折半か、収入比か、費目ごとか。そして名義を誰にするか。 別れるときに最も揉めるのがここです。

家事の分担を、具体的な作業名で。 「気づいたほうが」は分担ではありません。日本の調査で一貫して出るのは、同棲・結婚後に女性側の負担が偏る傾向で、これは話していない場合に強く出ます。

いつ見直すか。 半年後、一年後、と決めておく。決めていないと、話し合いのきっかけが「不満が限界に達したとき」になり、それは最も条件の悪いタイミングです。

一つ付け加えると、同棲は結婚生活の予行演習にはなりません。 抜けられる状態で暮らすことと、抜けにくい状態で暮らすことは、心理的に別物です。同棲がうまくいったことは良い材料ですが、保証ではありません。

出典

  • · Stanley, S. M., Rhoades, G. K., Markman, H. J. (2006). Sliding versus deciding. Family Relations.
  • · Rosenfeld, M. J., Roesler, K. (2019). Cohabitation experience and cohabitation's association with marital dissolution. Journal of Marriage and Family.
  • · Kuperberg, A. (2014). Age at coresidence, premarital cohabitation, and marriage dissolution. Journal of Marriage and Family.

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