見合い結婚
家族や仲介者が引き合わせ、本人が決める結婚。戦前の見合いとの違い、割合の推移、婚活との連続性、研究がわかっていること。
関係の科学
見合い結婚とは、家族や仲人、あるいは仲介する組織が候補者を引き合わせ、本人たちが会って決める結婚のことです。紹介するのは第三者で、決めるのは当事者 —— この分担が定義のすべてです。
英語の arranged marriage はしばしばこれの訳語として使われますが、指している範囲は同じではありません。日本語で最初に片付けるべき取り違えは、英語圏のそれとは別のところにあります。
戦前の見合いと、戦後の見合いは別物です
「昔は親が決めた」という言い方は、半分だけ正しく、しかも肝心なところが抜けています。
旧民法の下では、家の制度がありました。 婚姻には戸主の同意が要り、結婚は家と家の間の取り決めとして扱われていた。本人の意向が尊重されることはあっても、最終的な決定権の所在が今と違います。
これを変えたのは条文です。日本国憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と定めています。 「のみ」という語がわざわざ入っているのは、家の同意を要件から外すためでした。現在の民法742条も、当事者に婚姻をする意思がない婚姻は無効だと定めています。
つまり戦後の見合い結婚は、制度としては戦前のそれの続きではありません。 紹介の形式は残り、決定権の所在が入れ替わった。この一点を押さえないと、以下の話はすべてずれます。
なお、本人の意思に反する結婚 —— 強制結婚は、これとは完全に別のものです。英国、オーストラリア、ドイツ、カナダなどでは犯罪として明文化されています。日本に同名の罪はありませんが、上の二つの条文がある以上、意思を欠いた婚姻は法的に成り立ちません。紹介と強制は、連続した尺度の両端ではなく、別のことです。
割合はどう動いたか
国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査は、この推移を長期にわたって追っています。戦前は七割近くが見合い結婚でした。 戦後に恋愛結婚が伸び、1960年代後半に両者が逆転し、その後は一貫して下がって、近年は一割前後、あるいはそれ以下で推移しています。
ただし、この数字を「見合いという仕組みが消えた」と読むのは誤りです。同じ調査で、結婚相談所やインターネットを通じた出会いは別の項目として数えられています。そちらは伸びている。
構造を見ると、これは見合いの直系の子孫です。 第三者が条件で候補を絞り、引き合わせ、二人が会って決め、断るのは普通のこと —— 手順がそっくり同じで、仲人だったところに会社が入っただけです。自治体が婚活支援に予算を付け、都道府県がマッチングを運営しているのも同じ線上にあります。変わったのは仲介者が誰かであって、結婚に至る順序ではありません。
実際の手順
現代の見合いは、多くの人が思い浮かべる儀式よりも、条件を先に開示する紹介制度に近い形をしています。
- 仲人、親族、相談所、自治体の事業などが候補を挙げる
- 釣書(身上書)で、学歴、職業、家族構成、健康状態、収入といった条件が先に開示される。推し量るのではなく書いてある
- 二人で会う。今日ではほとんどの場合、付き添いはつかない
- どちらからでも断れる。断ることは失礼ではなく、手順の一部です
- 交際に入ってから決めるまでの期間は、恋愛での交際より明確に短い
ここに構造上おもしろい点があります。二つの方式は、それぞれ何を先送りにするかが違うだけです。 自分で選ぶ結婚は、相性の確認を前に置き —— 何年もの交際がそれです —— 現実的な条件のすり合わせを後に回します。見合いは条件のすり合わせを前に置き、人としての相性の確認を後に回す。どちらの順序が優れているという話ではなく、それぞれ違う壊れ方をします。
そして日本の見合いに特有の負荷は、強制ではなく断りにくさの側にあります。親の期待、仲人の顔、世間体。これは強制ではありませんが、圧力ではあります。曖昧なものを曖昧なまま書いておくほうが、どちらか一方に丸めるより正確です。
研究がわかっていること — ただし、日本の研究ではありません
先に範囲を書いておきます。この話題で引用できる研究のほとんどは、インドおよびインド系アメリカ人を対象にしたものです。 日本の見合い結婚を扱った比較研究は乏しく、以下をそのまま日本に当てはめることはできません。
満足度はおおむね同程度。 マイヤーズらはインドの見合い結婚とアメリカの自己選択型の結婚を比較し、結婚満足度に有意差を見つけませんでした。リーガンらはインド系アメリカ人の中で恋愛結婚と見合い結婚を比較し —— 文化を揃えたうえで —— 満足度、コミットメント、愛情のいずれにも意味のある差は無いと報告しています。
「後から愛が育つ」は部分的に支持されています。 エプスタインらは、見合い結婚では報告される愛情が時間とともに上がり、自己選択型では初期の強度が下がっていくという、逆向きの二本の線を得ました。交差するのは五年から十年あたり。ただし標本は小さく、追試も十分ではありません。強い主張として使える結果ではありません。
離婚率の比較は使えません。 見合いが多い社会で離婚率が低いことは、成功の証拠としてよく引かれます。ここには離婚へのアクセス、経済的な依存、離婚の社会的コストが全部混ざっている。低い離婚率は、満足度と同じくらい出口の狭さを測っています。
結果を決めているのは何か
結局のところ、どんな結婚でも結果を決めているのと同じものです。いちばん面白くない結論で、いちばん役に立ちます。
二人とも自分の意思で入ったかどうか。言いにくいことを早く出せるかどうか。揉めたあとに修復できるか、それとも溜めるか。そして、この結婚に何を期待しているかが二人で揃っているかどうか。
最後の一つが、見合いの構造的な弱点です。 短い交際期間がいちばん確認しにくいのがここだからです。裏を返せば、実務的な助言もここに集約されます。会っている数回を、印象ではなく中身に使う —— お金、子ども、どこに住むか、どちらの親の近くか、家事と仕事をどう配分するつもりか。条件が先に開示される方式なのに、この種の期待だけは釣書に書いていません。
なお、日本では見合いか恋愛かを問わず、結婚が決まった順番の一段として扱われます。どちらの入り口から入ったかより、その一段に何を同梱したつもりでいるかのほうが、後の揉め方を予測します。
出典
- · Myers, J. E., Madathil, J., Tingle, L. R. (2005). Marriage satisfaction and wellness in India and the United States. Journal of Counseling & Development.
- · Regan, P. C., Lakhanpal, S., Anguiano, C. (2012). Relationship outcomes in Indian-American love-based and arranged marriages. Psychological Reports.
- · Epstein, R., Pandit, M., Thakar, M. (2013). How love emerges in arranged marriages. Journal of Comparative Family Studies.
- · Forced Marriage Unit (UK Home Office / FCDO) — statistics and the legal distinction.